第5章 アサガオ *齋藤タカ丸*
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『うーん…』
「ん?どうしたの和歌菜」
今日もお風呂上がりの彼女の髪を櫛で溶かしていた時、
ふと和歌菜が何か悩むような声を上げた。
『最近、あたしに告白してきた人たちが怪我をしたり学校を辞めたりしてるんですよね。なんでだろう…』
「さぁ、何かの偶然じゃないかな。」
『偶然…ならいいんですけどね。ま、あたしに告白してもあたしに返り討ちにされているようじゃこの先忍者になんてなれないでしょうからね』
と、彼女は笑っている。
俺もそんな嬉しそうな彼女の顔を見るのが、嬉しかった。
髪を梳かし終わって、彼女は俺にお礼を言って今日の授業が疲れたからと先に布団に入ってしまった。
「俺、ちょっと外行ってくるね」
『ふぁぁ~…。…ふぁい、いってらっしゃいませ…おやすみなさ…い』
「うん、おやすみ」
と、返事をしたらすぐに彼女の寝息が聞こえてきた。
よっぽど疲れてたんだな、とすっかり寝入っている彼女を見て俺は部屋の外へと出た。
廊下を歩いて、俺が目指すのは・・・
5年生の長屋・・・
「おやまぁタカ丸さん、こんな夜更けにどちらへ?」
突然声が聞こえてきて、声の方を見ると庭に空いた穴から顔を出す喜八郎だった。俺はニコッと笑って答えた。
「別に、ちょっと夜の散歩」
「そーですか、その割には良く手入れされたハサミをご持参のようですね」
と、喜八郎からは見えない方の手で持っていたハサミの存在を見抜かれてしまった。やっぱりこういうところに差が出るんだな…と俺は観念して手にしていたハサミを見せた。