第4章 アネモネ *尾浜勘右衛門*
その日を境に、俺の彼女を見る目が変わってしまったような感じがした。兵助が彼女と一緒にいる所に割って入ったり、菓子をもらったら彼女にお裾分けしてしまったり・・・
「勘右衛門…お前まさか、和歌菜を好きになんかなってないよな?」
「はぁ?俺は年下には興味がないって知ってるだろ?」
ついに兵助にそんなことを言われてしまう始末だ。
俺は何とか何もないように振舞ったが・・・
なんとなく、彼女が気になっているのは事実だった。
他の委員会が彼女に助っ人を頼んでいるのを見て、羨ましいと思ってしまったり4年生達が一緒に食事をしているのを見ていいな…と思ってしまったり・・・
***
「勘右衛門聞いてくれ!!今度の休み和歌菜と出かける約束をしたんだ!!」
そんなことを思って居た頃から、徐々に兵助と彼女の距離が縮まっていく話を聞くようになった。
「ほう、そうか。よかったな」
「うん!どこに行こうかな~!」
と、子供のようにウキウキしながら話している兵助を見て俺はすごく複雑な思いを持った。
彼女は、本当に誰に対しても優しいのだ。
下級生はともかく、同級生にも上級生にも分け隔てなくてたまに見せる女の子らしさと、大人びた美しさがよく分かるようになってきてしまっていた。
「和歌菜って、可愛いところあるよな」
だから、兵助だけでなく他の5年生も少しだが印象が変わりつつある。今も一緒に実習の結果をまとめている八左ヱ門ともそんなことを話している。