第2章 ブッドレア *浜守一郎*
「や、やぁ和歌菜」
『用具委員の仕事終わったの?』
「あぁ、ここでなにをしていたんだ?」
『ん~?ぼぉ~ッとしてただけだよ。これが綺麗でさ』
と言って見せてもらったのは、白い小さな花だった。
花の知識もないからそれがどんな花かは分からなかったが、それを嬉しそうに見ていた。
「ん?花?」
『2年の四郎兵衛君と久作君にもらったんだ。ヤマユリだよ』
「ヤマユリ?」
『うん。散歩ついでに見つけたんだって。花言葉は【人生の楽しみ】って言うんだよ。』
「へぇ、詳しいんだな。」
『毒草を調べるついでに花の知識も身に着いただけだよ。でも花は好きだよ、なんか落ち着くから』
と、手にしているヤマユリを見て小さく笑っている彼女を見ると、心臓の辺りがギュッとする感覚がした。
その感覚が分からずに心臓の辺りを持つと、彼女が心配してくれた。
『どしたの?』
「えっ…いや、なんでも…」
『そう。…じゃああたし行くね。』
「どこ行くんだ?」
『喜八郎のトコ。落とし穴作り終わる頃に来いって呼ばれてるんだ。』
「へ、へぇー。そうなんだ」
ズキ…今度は、心臓の辺りが痛む感覚がした。
一緒に行く?と彼女に言われるとその痛みはなくなった。
さっきから俺の心臓はどうしたんだろう…と思うけど、そこまで気にならなかった。