第9章 オミナエシ *竹谷八左ヱ門*
「全く、なぜ編入してきたばかりの奴とこんなにも仲良くなれるんだ…」
「いいじゃないですか、手伝っていただけるのなら…。もうすぐウサギ達の産卵が始まりそうですし」
「そうだな、しばらくはウサギ達の…」
「おーい!!先輩方ーー!」
「お待たせしましたーー!!」
と、ようやく1年生達が集まってきた。
先頭を虎若と三治郎が走ってきてその後ろを一平と孫次郎が彼女の手を引いて走ってきたのだ。
「すみません、お待たせしました!」
「いや、俺も今来たところだから。それより…」
『あ、すみません…オレまで』
「…生物が嫌いなら無理に手伝わなくていい。」
『えっ…あぁ…』
俺は思わず口が滑ってしまった。
普段ならこんなこと言わないが、彼女が以前生物達を見て嫌な顔をしていたことを自分でも思った以上に根に持ってしまっているようだ。
彼女は少し俺に気を遣うように苦笑いをするが、彼女の手を引いていた一平と孫次郎が俺の前に立ちふさがってきた。
「ち…違います、若月先輩は…」
「生物が嫌いなわけはないんです!」
「えっ…どういう」
「じゃあ若月先輩!さぁどうぞ!!」
と、虎若と三治郎がいつの間にか小屋からヒヨコを連れてきた三治郎が手のひらにヒヨコをのせて彼女の前に差し出した。
『ひっ?!』
ヒヨコ1匹でこんな反応を見せるなんて、普通の女でもありえない。なにより…生き物に対してこんな反応をするなんて…!!と思っていたら・・・
彼女は怯えながら、三治郎が持っているヒヨコに手を伸ばした。
『う…うぅ…』
「大丈夫ですよ、怖くないです。」
「そうです…ゆっくり、優しく…」
と、虎若と孫次郎が彼女の脇でヒヨコを驚かさないように小さな声で彼女を応援している。
「ったく、動物嫌いに何をわざわざ…」
俺は、その光景を嫌悪そうに見ていたが彼女はおどおどしながらゆっくりと手にした。