第8章 ツキミソウ *中在家長次*
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「えへへ…」
「小平太気色が悪い。」
その日の夕食時・・・
6年で揃って夕食を取っている中で、七松は始終顔が緩みっぱなしで夕食にもろくに手を付けていない状態だった。緩んだ顔のせいで締まりがなくなってしまっているせいで立花に気色悪いと言われる始末だ。
「ぐふふ…」
「よっぽど嬉しいんだね。和歌菜と両想いになれて」
「ケッ…」
「全く、忍者の三禁はどうした。」
「…モソ」
食事も手につかないほどうっとりと何かを考えている小平太の顔がどうにも幸せを感じているように見て取れた中在家は、黙々と食事をとっているが・・・
「おっ?和歌菜ちゃんだ」
「へっ!?和歌菜ーー!!」
勢い余って立ち上がった瞬間に6年が座っている机がガタンッ!と音を立てて動いてしまったため机に乗せていた膳がみんなこぼれてしまった。
「テメエ小平太!!」
「和歌菜ー!!」
食堂の中なのだからそんなに距離はないはずなのに彼女を見て大きく手を振る。4年生の者と共に食堂に入ってきた彼女はそんな七松を見て、慌てたように彼女の隣にいたタカ丸の後ろに隠れてしまった。
その光景にハッとした小平太は、慌てたように飛び跳ねてタカ丸めがけて突進した。私の和歌菜に何をしている!!などと大声で騒ぎ立てるものだから、ついに食堂のおばちゃんまで怒鳴りだした。6年生達は夕食を台無しにされて怒鳴り始める始末で食堂は大騒ぎだった。