第8章 ツキミソウ *中在家長次*
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彼女を保健委員の善法寺にまかせ、2人は部屋に戻った。
ようやく落ち着いた七松は、すっかり落ち込んでいるようで部屋に戻っても大人しくなっていた。
「・・・。」
「長次…話していいか?」
「…なんだ。」
「…さっきな」
普段では想像もできないくらい小さな声でぽそぽそと話し始めた。中在家は本を読みながら七松の方は見ずに話を聞く姿勢を見せた。
「さっき…和歌菜に思いを告げられたんだ。私を…好きだと」
「…ッ!?」
中在家は、七松の予想外の言葉に中在家は持っていた本を落としそうになった。彼女から七松に対し好意を持ちその思いを告げたなんて、七松には申し訳ないが全く予想もしていなかったのだ。
「…それならばなぜ」
「…恥ずかしいが、あまりに突然で歓喜のあまり…」
と、口元を隠しながら七松は静かに語り始めた。
***
今日山に連れて行った際、いつも通り鍛錬をしながら七松はふと気になって聞いてみたという。「好きな人はいないのか」と
すると、彼女は振るっていた扇を止めてじっと七松を見て微笑んだ。
『あたしは…貴方が好きです。小平太さん』
彼女が、はっきりと七松の顔を見て彼女の優しい声でそう言った。
いつもは細かいことは気にしない七松だったが、もういろいろなことを考えすぎて混乱してしまったようだった。
いつから彼女は自分の事が好きだったのか・・・
どこで好きになってくれたのか・・・
今この状況で自分はどうしたらいいのか・・・
そして・・・