第8章 ツキミソウ *中在家長次*
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「和歌菜ーー!!」
あの日以来、七松は今まで以上に彼女に過干渉になった。
他学年が彼女と話していようが、なにかしていようがお構いなしだった。
今日も、綾部を始めとした作法委員会の面子と共に首実験用のフィギュアを手にしている彼女に七松は思いきり抱き着いたのだ。
『あ、小平太さ…グッ!?』
「和歌菜ー!今日も鍛錬しに行こうぜ!!」
『いえ、今日は作法委員会の…』
「細かいことは気にするな!!」
なんて言っては、彼女を抱えたまま裏裏山に消えていく日が続いていた。
彼女と共に用具倉庫に向かっていたであろう作法委員の面々が呆然と七松達が去っていった方を見ていたが、ふと綾部が中在家もその光景を見ていたことに気が付いたようでため息交じりに近づいてきた。
「中在家先輩、おたくの野生児何とかしていただけませんか?」
「…モソ」
「…あの人、和歌菜を自分のモノと勘違いしてるわけじゃないでしょうね。」
と、普段は感情を表に出さない綾部がこんなに怒るなんて珍しいと感じるが中在家は綾部の言葉に少しだけ同感だった。
最近の七松には、目に余るものがあったのだから
「ちゃんと手綱握っていてくださいね。本当に取られたらたまりませんから。」
「…。」
綾部はそれだけ中在家に言い残して、委員会に行ってしまった。
ふぅ…と息を吐いて見送る中在家は、七松達が向かった裏裏山を見ていた。だが、今は放っておくべきだと思い中在家は手にしている書物を持って図書室に向かう。