第8章 ツキミソウ *中在家長次*
夕食中にも、七松は中在家に彼女の事を延々と話していた
この前はこんなことをした…だの、この前の委員会で…なんて再三聞いた話を聞かされ続けていた。
「それでな!!」
「小平太…和歌菜がいるぞ」
「えっ!?」
と、途端に顔色を変えてキョロキョロと周りを見渡すがすぐにまた顔つきが変わった。
「…ん?」
「なぁ、長次…和歌菜って4年生と仲いいよな。」
「…同級生ならば仕方あるまい」
「でもよ~…」
と、箸を加えたままうだうだしている七松に「行儀が悪い」と言っても聞く耳を持つはずがなかった。
はぁ…なんてため息をつきながらも中在家も彼女のいる方を見る。
4年生は事件以来共に行動することが多い。
元々は個性が強くて団結力がないなんて言われていたのに、彼女が現れてからというものかなり団結しているように見える。
それに・・・
「和歌菜~…あーん。」
『ちょっと綾!!あたしのおかず取らないでよ!!』
「じゃあ俺のあげるよ、はいあーん。」
『いや、あーんは…』
4年生達と仲睦まじい様子を見てしまうと、どうも中在家の心中ももやもやした。それでも意識しないように平常心のまま夕食を口に運ぶが、彼の正面にいる七松はあからさまに敵対心をむき出しにしていた。
「小平太、落ち着け」
「私はいつだって落ち着いている…!」
嘘つけ…なんて思っても中在家は口にはしない。
なにかやらかさないか、それだけを案じていた。