第8章 ツキミソウ *中在家長次*
凄い勢いで走ってきたのは、実習中の七松小平太だった。
彼女と中在家が感じていたのは彼のものすごい威圧だったようだ。
『あ…小平太さん…。』
「長次!!お前誰に断って和歌菜と出かけてるんだ!!」
「…許可など必要なのか?」
『あたしが誰と出かけてもいいじゃないですか。今回だってあたしが勝手に長次さんに付いてきただけですから。』
「長次ばっかりずるいぞ!!和歌菜!!わたしともでーとしよう!!」
『今日はもう帰りましょうよ、夕食の時間になってしまいますよ。』
「むっ…それもそうか。じゃあ和歌菜!!私と帰ろう!!」
と、七松は彼女の腕を掴んで甘味処を後にしようとした。
その時七松は、彼女にバレないように一瞬だけ中在家を睨んだ。中在家はその視線に気が付いたようだったが、何も言わずに甘味処に勘定を置いて2人の後を追った。
***
『では、今日はありがとうございました。』
「あぁ、また頼む」
と、彼女は中在家に頭を下げて自室に戻っていく。
残された2人・・・特に七松は、今にも中在家に掴みかかる・・・というか掴みかかっていた。
「ちょぉじ…ちょっと顔貸せ」
と、いつものいけいけどんどんの状態ではなくこれは七松の本気で怒っている時の顔だった。