第2章 花姫と恋
本丸のお庭はとても美しくて、花壇には季節の花たちが咲き誇っていました。
刀剣である私たちが、畑を耕し、作物を作っているということに驚きましたが、畑当番の皆さんが楽しげに作業をされている姿を見て、畑当番が楽しみになりました。
五虎退さんと手を繋ぎながら厩へやってくると、また別の刀剣男士達がお馬さんたちのお世話をしているようです。
「偽物くんたちは大勢で随分と楽しそうじゃないか?」
「乱に五虎退も。どうかしたのかい?おや?其方の方は…?」
「…写しは偽物なんかじゃない。新しく顕現した刀剣女士だ。本丸を案内している」
『日和姫と申します。どうぞよろしくお願いいたします』
何とも見目麗しい殿方達が並んでいることか……
特に優しそうな雰囲気の水色の髪型の殿方は乱さんと五虎退さんととても親しげだ。
「いち兄、日和姫さんは脇差なんだよ!」
「僕、あるじ様から日和姫さんのお世話係を拝命しました…!」
「それはとても栄誉なことだね、五虎退。確りと頑張りなさい。大変失礼致しました。私は一期一振。粟田口吉光唯一の太刀で、この子達の長兄にあたります。よろしくお願いいたします」
一期一振さんの物腰が柔らかく、また気品溢れる所作に、思わず見蕩れてしまい頬をほんのり赤く染めてしまう。
『乱さんと五虎退さんのお兄様でしたか。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします』
「日和姫殿、どうぞ私のことは一期とお呼びください」
『は、はい。一期さん、ですね』
お名前を呼び返すと、一期さんがとても優しげに微笑まれたので、つられてにこりと微笑み返した。
こんな素敵なお兄様がいらっしゃる乱さんと五虎退さんが羨ましいです。
「日和姫さんはお姫様の刀だったんだって。すっごーくかわいいよね♡」
「日和姫さんも、お、お姫様みたいです」
『前の主様はお公家様に嫁がれたので、それで私も……少し派手でしょうか…?」
私の言葉を聞いて一期さんは少し驚いたような顔をしてから、柔らかく瞳を細めて微笑んだ。
「いえ、とてもお綺麗ですよ。…実は私も物腰の割に服が派手と言われるのです。前の主の影響ですかな…同じですね」
こ、こんな見目麗しい方に微笑まれてしまっては…心臓が持たなそうです……