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花姫と恋【刀剣乱舞】

第2章 花姫と恋



あの演練の日以来、私は自室から出られずにいました。
本当の自分は、あの他の本丸の日和姫のように酷く穢れを纏っているのではないかとそう思えてならず、主様にも皆さんとも顔を合わせることが怖くて、閉じこもっている状態です。
何時迄もこのままではいけないと理解していても、中々恐怖を打ち消すことは出来なくて。うさぎ耳のフードを深く被りながら部屋の隅で泣きつつ膝を抱えていました。
不安から夜も眠れていませんでした。

部屋の片引き襖の下の方をカリカリと引っ掻く音が聴こえて伏せていた顔を上げると、子猫のような影が部屋の周りを徘徊しては座り、またカリカリと襖を引っ掻いて…と繰り返しているのが影に映っています。五虎退さんの子虎さんのようです。
少し躊躇って思案した後、静かにそっと襖を開くといつもそばにいてくれた虎さんが直ぐに入ってきて嬉しそうに尻尾を揺らしながら擦り寄ってきました。


『虎さん…ふふ…お久しぶりですね』

虎さんは私の膝の上に乗ると、丸くなって眠り始めました。
久しぶりの温もりに癒される心地がして、虎さんを撫でているうちにウトウトとしてしまったようです。


『…ん…』

いつの間にか寝てしまっていたらしくぼんやりと目を覚ますと、先程までは無かった肌掛けが掛かっていると気がついたと同時に隣に人の気配を感じて、思わず距離を取ってしまった。


「す、すまない‼︎ 様子を見にきたら襖が開いていたから…」

『…国広さん……』


突然のことに動揺してしまい肌掛けを手繰り寄せることしか出来ず、俯いてしまう。
一体どんな顔をして会えばいいのかわからなかったというのに…


「……寝れていないのか…?」


先程顔を覗き込まれた時に気づかれてしまったのだろうか…何も言えずに俯いてしまうと、国広さんはポツポツと静かに話し始めた。


「……主が…姫に会いたくて寂しそうにしている。顔を見せてやってくれないか?」


その言葉を聞いて一気に感情が溢れ出してしまい、止まらない涙を必死に拭おうとした途端に国広さんに抱き寄せられた。


「日和姫…あんたに泣かれると、俺も主も参ってしまう…」

ぎこちない動きで私の背中をあやすように撫でる彼の掌が温かくて、更に泣けてきてしまうのです。

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