第2章 花姫と恋
対戦相手の本丸の皆さんに皆で一礼をしてから主様の元へ戻ると、主様が私をぎゅーっと抱きしめて下さいました。
「日和姫、間違いなく貴女が誉れ刀ですよ。皆さんもお疲れ様です。よく頑張って下さいました。ありがとう」
主様の、こういうお姿とお言葉がとても好きです。
人でありながら私たち刀の付喪神を束ねる存在ですけれど、私たちに尊敬と敬愛を持って接してくださる。
主様のために強くなりたいと、私を含め誰もが感じていることでしょう。
次の試合が始まるまで観客席で過ごす事にした私たちは移動を始めました。
すると、向かいの通路の奥から別ブロックで演練を終えたばかりの様子の一行がやってきました。
「あれって、他の本丸の日和姫さんじゃない?」
偵察力の高い乱さんが気がついて、私達も一行に視線を向けました。
「なんか……様子が変じゃない…?」
蛍丸さんが何かに気がついたのとほぼ同時に、私も他の皆さんもその一行の異変を感じ取りました。
なんだか、あの一行を取り巻く空気が澱んでいるように感じるのです…。
そしてその中にやはり私、日和姫と同じ姿形の刀剣女士が居て、彼女を岩融さんが抱き上げて運んでいるのです。
2振りはベッタリとくっ付き合い、彼女の手は岩融さんの胸元を厭らしく撫でていて。
彼女を見る他の刀剣男士達や男性の審神者様の視線や様子も霊力が澱んで尋常ではないといった雰囲気で……
あまりの衝撃に真っ青になってしまい、あの一行を見たくない、彼女とすれ違いたくない、という気持ちがのしかかり金縛りのように体が動かず困惑していると、どなたかがグイっと私の腕を引いて通路の端に隠してくださいました。
目の前には綺麗な瑠璃色。三日月さんが見えないようにしてくださったのだと分かると、安堵から途端に意識が遠のくのを感じて……
私は意識を手放してしまったのです…