第2章 花姫と恋
「おい。こんな所でうとうとするな」
上から聞こえた声の方をゆっくり見上げると、国広さんが立っていました。
『国広さん…どうされたんですか…?』
「主に一日の報告と挨拶をしてきた。…姫、部屋はすぐそこだろう?布団へ入れ」
国広さんの手が私に触れて、体を支えながら立ち上がらせてくれたと同時に、人の温もりを感じて思わず体を擦り寄せてしまった。
「っ…、俺で暖をとるな」
『ふふ…あったかいです…』
瞼がとても重くなってきて、目をどうしても開けることが出来なくて、そして何かを国広さんが言っているような気がするけれど……
そこで私の意識は途切れてしまって、
気がついた時には朝になっていました。
微睡んでいた意識が少しずつ覚醒してきて、目を開くと目の前にはとても綺麗な金糸の………
国広さん?!
えっ?どうして国広さんが私のお布団にいらっしゃるのです!?
まだ眠る彼の腕を枕にしていたようで、声にならない声を抑えながらそっと頭を上げました。
すると重みが無くなった事に気がついた国広さんが目を覚ましたのです。
「………起きたのか…」
寝起きの少し掠れた低い声に、心臓が小さく跳ねたように感じました…
しかし国広さんは起き上がったと同時に真っ赤になって私の浴衣の袷をぎゅっと引っ張って直したのです。
突然の事で全く気が付かなかったのですが、胸元が大きく肌けてしまっていたようです…
「なっ……ちゃんと着ておけ!」
『は、はいっ…すみません…でもどうして国広さんはここに…?』
彼はいつも内番着に纏ったままの肩の布を深く被ると俯いて、
「お前が昨晩抱きついてきて、そのまま眠ってしまったんだ。どうしても離れようとしないから……」
『ひえ…す、すみませんでした…!』
「……別にいい。支度したら朝餉だ。早く来い」
布を被ったまま俯きつつ立ち上がった国広さんに慌てて返事をすると、彼はそのまま部屋を出ていってしまった。