第2章 花姫と恋
その後数日は一期さんの神気を纏ったままだったこともあって、私は主様の執務室で過ごしていました。
あの日の出来事を知るのは、初期刀の国広さんと、近侍であった加州さんと、私をやむを得ず助けてくださったという一期さんと、私のお世話をしてくださる五虎退さんのみです。
夜伽役を行わないのであれば私の体質上、発情期は避けられない…という事で、
緊急事態は私の事情を知る方々に、口移しで神気を分けて頂くのが今のところ最善、という事になったのですが……
「…ちょっと、一期一振。その誉桜なんとかならないの?困るんだけど。ずっと桜吹雪じゃん」
本日、主様は審神者の会議で政府の施設へ国広さんとお出かけになっています。
その間、私と一期さんは執務室で待機をしながら近侍の加州さんの仕事をお手伝いすることになっています。
私は執務室に引きこもりなので、今日は五虎退さんは久しぶりに出陣に向かわれました。
「…も、申し訳ない…コントロール出来るのならなんの苦労もしませんな……」
「もう…日和姫と顔を合わせるたびにそうなんだから……」
『も、申し訳ありません…応急処置をしていただいたから……』
「「応急処置」」
私の発言に何やら複雑そうな表情の一期さんと、物凄く笑いを堪えているような加州さんを不思議に思って首を傾けてしまいます。
「っ…だって、あんな……漢らしく宣言して挑んだのに…」
『??』
「加州殿、作業が止まっておりますぞ」
何やら笑顔に圧がある感じの一期さん、初めて見ました…。
加州さんが、はいはいと軽く返事をしてまた作業が再開されます。
「ねぇ、日和姫。もし、発情期の前に日和姫に俺の神気を送り込んだら…予防になるのかな?」
「なっ…?!」
『予防、ですか…?』
「そ。ちょっと試してみようか?」
加州さんはそういうなり近侍の執務机に向いていた体を私へと向けました。
「お待ちください!日和姫殿の体にはまだ私の神気が残っております。加州殿の神気と交わるのは…」
一期さんが私と加州さんの間に割行ってきたと同時に何故か御二方とも気分が悪そうに俯き始めました。
加州さんが小声で「それはないな……」と呟いていらっしゃいます。
だ、大丈夫でしょうか…?