第2章 花姫と恋
side刀剣男士
「主!!日和姫の様子がおかしいんだ!」
日和姫を抱いて審神者の執務室を訪れた山姥切国広は慌てた様子で飛び込んできた。
隣にいる五虎退も酷く動揺していて、息を切らしている。
執務室には近侍の加州清光と、出陣先から帰還した部隊の隊長である一期一振が任務報告を行っている最中であった。
審神者は日和姫の熱に浮かされたような症状を見て、何かに思い当たったようだ。
「国広、日和姫を隣の空き部屋へ運んで下さい。五虎退は一先ず日和姫の傍にいてやってね。準備をするから、少し待っていて下さい。国広は直ぐに戻って状況を教えて頂戴」
「な、なんだ、この凄い花みたいな強い香り…!」
「日和姫殿でしょうか…」
「日和姫の霊力が暴走しているようですね…」
「戻ったぞ。この花のような強い香りは、五虎退は感じない様子だった。遠征任務が終わって本丸に帰還途中に日和姫が倒れたんだ」
審神者は少し考えを巡らせたあとに口を開いた。
「…この事はあなた方以外他言無用です。国広は初期刀であの子の顕現時に居合わせたので知っていると思いますが…日和姫は時の政府より遣わされた、全ての刀剣男士の夜伽役兼花嫁候補なのです」
「「は?」」
「お聞きなさい。ここからは審神者である私しか知らない情報です。私の本丸では夜伽役行為を禁止しました。純粋に過ごして貰いたかったので…しかし失念していました…日和姫は約1ヶ月毎に発情期があるそうです」
「「「発情期?!」」」
清「は、発情期って…」
国「な、な、」
「…この状況ではあなた方の誰かに頼まねば…」
「私が参ります」
思わぬ申し出に誰もがその声の方を向いた。
一期一振である。
「一期、良いのですか…?」
「はい。……日和姫殿をお慕いしているので…彼女の力になれるのであれば、私がお引き受け致します」
一期一振の突然の告白に、山姥切国広も加州清光も開いた口が塞がらない様子だ。
「…分かりました。頼みましたよ、一期。五虎退と交代して下さい。その後、そちらの部屋に結界を張ります。日和姫の暴走した霊力が他の刀剣男士に影響を与えないようにします」
「承知致しました」