第2章 花姫と恋
そんな話をしていると、畑当番らしい骨喰さんが五虎退さんを呼ぶ声が聞こえてくる。
「いいよ、いっておいで。俺が日和姫といるから」
「は、はい!ありがとうございます。行ってきます」
慌てた様子で走っていく五虎退について虎くん達も走っていってしまって、加州さんと私だけが残されてしまった。
「多分、育ててる野菜のことだと思う。日和姫、ちょっと付き合ってくれる?近侍の仕事が一段落して休憩中なんだ」
近侍のお仕事は1ヶ月の当番制らしく、今は加州さんが担当されているらしい。
そんな彼に手を引かれて連れてこられたのは、彼の部屋だった。
「今安定は出陣で居ないんだけど…ちょっと話したいなって思って。ここに座って」
座布団を出していただいて、そこにちょこんと腰掛けた。
すると、加州さんにじーっと見つめられる。
『あ…あの……』
「俺さ、主に1番に愛されたいんだ」
『は、はい』
えっ?こ、これはもしかして、何か叱られるパターンとかですか…?
緊張から固まってしまった。
「…はは。違うよ、怒ってるとかそういうんじゃなくて。ただ…驚いたんだ。日和姫は初めての刀剣女士で、女の子たった1人だろ?主や国広が過保護になるのも仕方ないのかなって」
『かほご………?』
「あ、それ分かってないでしょ。…まぁとにかく…主が超過保護になってるお姫様に俺も興味があるわけ。わかる?」
『私、ですか…?』
「そう。だから、俺とも仲良くしてよね」
そっと手を取られて親指の付け根を加州さんの綺麗な親指の腹で撫でられる。擽ったさにぴくんと体を小さく跳ねさせると、加州さんは満足そうに目を細めて微笑んだ。
「あ、あの、爪紅を塗っていただいたのですか?」
『はい。加州さんがお揃い、って言ってました』
あの後爪紅を塗っていただいて、赤く色付いた自分の手を眺めてしまう。
初めての経験ばかりで戸惑うことの方が多いけど、とても楽しい。
加州さんの指…綺麗だったけど、私のと違って殿方の手だったなぁ…