第2章 花姫と恋
「日和姫さん、こちらにどうぞ」
いつのまにか再び側に来ていた五虎退さんに手を引かれて、広々とした席へとやってきました。
見知った乱さんが手を振ってくれているのを見て笑みが溢れます。
「日和姫さんは、ここに座って!僕と五虎退の隣だよ」
お邪魔します、と言って座った後に大広間中に響く「いただきます」の声。
再び聞こえてきた野太い声に驚いて、またもや体が小さく跳ねてしまいます。
「お、驚きますよね。これは、食事の前の挨拶なんです。命を頂きますって、感謝の言葉なんですよ」
隣から聞こえてくる五虎退さんの声は、出会った時も感じたけれど優しい音です。
私に用意された初めての食事は、「初めてはうすあじ!」ということらしく
白いおにぎりとお味噌汁、そして厚焼きたまごというものでした。
皆さんとは別のメニューのようです。そして皆さんが使っているお箸というものではなくて、ふぉーくという三叉の槍の小さいものを使って食べることに。
最初に目に入った黄色い厚焼きたまごを、ふぉーくで小さく切ってパクリと口に運ぶまでの私の動作を、周りの皆さんが見守ってくれていて、しかもよく見たら目の前のお席に一期さんがいらっしゃるではありませんか…どこからか、「口ちっさ…」とか聞こえます…とても緊張します…
『!!!!』
「日和姫殿?いかがですか?」
ゆっくりと咀嚼して飲み込んだ後、初めて喉を通る感覚に驚き口元を慌てて指先で押さえ、意図せぬ高揚感に思わず目があった一期さんに無言でコクコクと頷いてしまいます。
「…んんっ…美味しかったようですね」
彼の様子を見て、いち兄?どうしたの?と周りの子達が不思議そうにしています。