第5章 VS白鳥沢
ー月島side
いった…
クソ…こんな時に…
幸い小指、痛みさえ我慢すれば
血ってどれくらいで止まるんだろう
ガチガチにテーピングで固めれば…
次のローテで日向が前衛、それまでに
頭の中で思考が駆け巡る
「とりあえず、医務室だ」
遮るようにコーチに言われる
「僕が戻るまで、ちゃんと時間稼いでよ!」
珍しく声を荒らげて日向に言う
僕らしくもない
清水さんに付き添われ、アリーナを出ると、叫び声をあげながら階段から転がり落ちてくる歩
「歩…」
「ツッキィ…」
後ろから兄ちゃんと谷地さんも追いかけてくる
「蛍」
「兄ちゃん、何でいんの?知ってたけど」
「弟の勇姿を見に来たに決まってんだろ…
その様子なら死にはしないな」
「死ってなに?でも生きてても肝心な時に役立たずだけど」
自嘲気味に言いながら、3人の前を通り過ぎる
「でもまぁ5セットなんて疲れるし、休めてちょうどいいよ、指痛いし」
「俺の仲間はほっといても勝つ!それぐらい思ってればいいんだ!」
兄ちゃんが後ろから言う
「心配しないで、戻ってきたら負けてたなんてことないから
歩ちゃん…月島のことお願い」
清水さんはそう言うと、アリーナに戻って行った
歩と並んで歩くけど、言葉はない
チームのピンチに負傷退場なんてダサすぎて、かける言葉もないんだろう
「ねぇ…何かいいなよ…いつもみたいに。カッコ悪いとか、バレーしてる僕は好きじゃないとか」
「…かっこ悪いわけがないやろ…」
こっちを見た歩は目にいっぱい涙を溜めている
「前にバレーしてるツッキーあんまり好きやないっていったけど、取り消すわ。私、多分今日のツッキー一生忘れへんと思う。何十年経っても、おばあちゃんになっても」
「大げさ」
「言われると思った」
涙を拭いながら歩が言う
「転校してきて初めて会うた日からずっと一緒にいるけど…
男の子が変わる瞬間なんて一瞬なんやな」
射るように真っ直ぐ見つめられドキッとする
医務室に入り処置をされる
止血をして、脱臼した指を固定してもらう