第15章 BOOST
ー月島side
歩を好きになればなるほど
僕だけに見せる顔を知れば知るほど
「…むかつく」
思わず、口に出してしまっていた
さっき歩は僕の母から貰った幼少期の僕の写真を愛しそうに眺めていたけれど、僕は彼女の幼少期の写真を見たいようで見たくない
そこにはきっと宮侑の姿がいつもあって、その存在を嫌でも意識してしまうから
愛らしい幼少期の彼女、僕が見たことのない歩の全てを宮侑は知っている
歩の初めては全て宮侑と…
どうしてもその言葉がちらつく
僕は屈折しているから、歩が僕に注ぐようにアイツにも愛情を注いでいたとしたら
むかつく
「え?!」
驚いた歩が声を上げる
無理もない
こんな甘ったるい空気の中でまさか、そんな言葉が出てくるとは思いもよらなかっただろう
「ごめん…歩が、じゃないから」
「よかった、なんかしたかと思った」
「仕方ないって分かってるけど…こんな風にキスするのも、僕が初めてじゃないんだって思って、つい」
歩の肩にもたれながら、小さく呟いた
「それ言い出したら蛍やって、私が初めてじゃないやろ?一緒やん」
「…そう言われたら、そうだけど。こんな風に誰かを好きになったことなかったから…でも歩は違うデショ?その…宮侑…のことも本当に好きだったデショ?…って仕方ないのにね、ごめん。忘れて」
そう言って歩から離れ、頭を冷やすために自分のベッドに仰向けになる
すると歩が
「は?私の方がムカつくわ」
と言って立ち上がり、僕の上に馬乗りになる
歩は怒っているけど、中々刺激的なシチュエーションにドキっとする
「蛍さっき、今の僕じゃだめ?ってゆったやん?今の蛍のことが好きなんは今の私やろ?蛍こそ、昔の私じゃなくて今の私を見てよ」
今の彼女も過去の彼女から繋がった1人の人間である以上、切り離すことは出来ないけど、過去に捉われて今の彼女の愛を踏みにじるのはナンセンスだってことぐらい僕にも分かる
「ごめん…」
「大体!!!私は蛍でいっっぱいで、もう何も考えられへんくらい夢中やのに、そんなん考えてる余裕あるとか余計むかつく!」