第5章 VS白鳥沢
少し乱れたセットアップからウシワカのスパイク
その瞬間を待っていたかのように
ツッキーが跳ぶ
…
ウシワカが放ったスパイクは白鳥沢コートに落ちる
「ドシャットぉぉぉ!!!」
「あいつだれだ?」
「ウシワカとめたっ!」
会場が騒然となる
ツッキーがぎゅっと拳を握る
「っしゃぁぁぁぁぁぁあ!」
喧騒の中
私にはツッキーの声だけが響いた
ずっと疑問に思ってた
ツッキーはバレーしてんの楽しいんかなって
あの日
ちゃんと見ててって言われて
それからずっとずっと見てた
そんで私は今日…
彼がバレーにハマる瞬間を見た
鳥肌が立ち、身体が震えた
ツッキーはきっと
たかが25点中の1点なのに大げさって
笑うやろうけど
私はこの1点
多分一生忘れへんと思う
烏野は、ツッキーのブロックで30点を超える激戦のセットを奪取した
「歩…ちゃん、泣いてる?」
「え?」
頬を伝う涙を手のひらで拭う
「泣かへんって決めてたのに…」
…と思ったら
「お兄さん!私よりもっと泣いてるやんっ」
「よっぽど弟のブロックが嬉しかったんだね」
冴子さんが笑う
「蛍がちゃんとチームに溶け込んでる…それに、こんな風に泣いてくれる女の子まで…」
私はお兄さんにティッシュを手渡す
「ありがとう、多分今相手のセッターちょっと乱れた気がした」
お兄さんが言うけど、他のみんなは
「そうだった?」
と首を傾げる
「いや、気がしたレベルですけど…」
「私もそう思いました、しかもツッキーは分かってて執拗にワンチを取り続けて相手セッターにプレッシャー与えてた気がします」
「さすが、月島くんは頭がいいから常に色々考えてるんでしょうね」
やっちゃんが言う
「ごめんな、あいつ偏屈だろ」
お兄さんは困ったように笑う
きっと何か思うところがあるんやろう
いつかツッキーから聞かせてもらえるかな
「いいえ、最近のツッキーは心のままに動くことが増えたと思いますよ。お兄さん、ツッキーのこと大好きなんですね」
「だ、大好きなんてそんな」
「ほんまはツッキーもお兄さんのこと好きやと思います、あの眼鏡、スポーツグラスって言うんですか?いつも大切にしてますよ」
お兄さんは恥ずかしそうに笑う