第5章 VS白鳥沢
ー歩side
3枚ブロックが跳び…抜けた先にノヤさん
ボールは高く上がり、影山くんからのセット
ツッキーのスパイクが決まる
「っしゃぁぁ!!!」
身を乗り出して叫ぶ
心臓のドキドキが止まらん
AEDいるん私の方やん
ブロックでドシャット出来たら気持ちいい
天童さんとかめっちゃ気持ちいいやろな
でも、トータルディフェンスなら白鳥沢と戦える
初めてウシワカのスパイク目の当たりにした時の絶望はもう感じひん
「なんかモビングっぽいですね!捕食者の猛禽類に対して、集団で追い払う鳥の行動!」
やっちゃんが言うと
「かっこいいワード知ってんな」
お兄様たちが感心する
そこから取ってとられてデュースにもつれ込んで
どちらもあと2点が取れない
もどかしくてもどかしくて…
ここでセットを落とせばいよいよ後がない
「なんか蛍の様子おかしい」
ツッキーのお兄さんが言う
「確かにいつもより目に生気がある気が…」
「蛍は学校でちゃんと友達がいるのか心配になってきた」
「いや、そういうわけでは、so coolってことで…あ、ここにいる歩ちゃんと月島くんはすごく仲良しで、クラスで夫婦なんて呼ばれてるんですよ!」
「ふ、夫婦?!」
お兄さんが驚く
「ちょ、やっちゃん!お兄さんびっくりしてはるから!急に弟嫁現れたみたいになってるやん!違いますよ、お兄さん!」
「そうか…君が蛍の…」
お兄さんは意味ありげに笑う
絶対何か勘違いしてるやん
でもまぁお兄さんの言う通り
なんかいつものツッキーと違う気がする
私自身もいつもならコート内のみんなを満遍なく見るんやけど、今日は気づいたらツッキーを目で追ってる
目が離せない
冷静で研ぎ澄まされたプレーの中に
今までで見た誰よりもアツイ
炎が燃えているのが分かる
心臓がドキドキとうるさい
ツッキーのプレイは
執拗に
執拗に
相手にプレッシャーを与える
前に影山くんが言ってた
自分のスパイク止められるより
自分がセットアップしたスパイク止められる方が100倍ムカつくって…
毎回自分がセットアップしたスパイク
ワンタッチワンタッチワンタッチ
先に限界がきたのは向こうのセッター白布さん
少しの苛立ち
微かな綻び