第4章 代表決定戦
ー縁下side
もう無理
俺には大地さんの代わりなんて務まらない
またミスする
俺なんて
どうせこのボールも届かない…
伸ばした手の向こうにボールが落ちる
滑り込んで倒れた俺の頭上から声がする
「縁下さぁぁぁん!いったれぇぇぇぇ!」
こんなところでは終われない
俺は立ち上がって彼女の方を見て頷いた
初めて部活見学にきた橘さんは、すぐにみんなと打ち解けた
面倒見がよくて日向や影山にテスト勉強を教えてあげてるみたいだった
顔も美人だし、明るくて面倒見もよくて、俺なんかとは住む世界が違う子なんだろうって思った
なのに
東京合宿に向かうバスの中でスガさんに2年で1番タイプなのはって聞かれて、俺って即答してくれた
正直すごく嬉しかった
別に俺のことが好きなわけではないってことぐらい分かってるけど、それでも好感を持ってくれてるってだけで充分だった
彼女を目で追ってると、他のヤツの視線にも気がつくわけで
烏野のメンバーの中にももちろん、他校にも橘さんを狙ってるヤツが大勢いることを知ってしまった
どいつもこいつも俺より全然カッコいい奴ばっかで
この気持ちをなかったことにしようと何回も思った
でも…
和久南との試合後、自分の弱さに打ちひしがれてトイレで顔を洗って出てくると
橘さんがいた
誰かの代わりではなく俺を俺と認めてくれる人
彼女と話していくらか落ち着いた
2人で並んでみんなの元に向かう途中
「そういえば縁下さんの名前ってピッタリですね。縁下家に産まれて、力って名前つけたご両親に拍手です!」
そう言って橘さんは笑った
名の如く、力が漲った
諦めようと思っても諦められない
君の代わりなんていない