第15章 BOOST
お兄さんはすごいな…
なんて素晴らしい息子なんだろう
この状況で言えば、私が長女でお兄さんと同じ立場になるけど、母ちゃんに妹たちを産んでくれてありがとう、などと言ったことは一度もない
てゆーか、別に思ってない
当たり前にいるし、一緒にいたら面白いこともあるけど、うざいことも憎たらしいこともいっぱいあって、まだ今の私は妹たちを産んでくれてありがとうって心からは思ってない
そう思うと、いかにお兄さんが素晴らしい兄であるか
その愛がどれほど深いのかを思い知らされ、また涙が溢れ出す
私の様子を見てお母さんもまた貰い泣きし、2人で号泣していると
「え…なに、この状況」
ドン引きする蛍の声
無理もない
母と彼女が対面に座って号泣してるとか、何事
「全然あがってこないし、何してんのかと思ったら……何してんの本当に」
呆れたように蛍が言う
「アルバム…見てて…まだ3ページしか見てないのにぃ…グスン」
「アルバム?」
そう言って蛍は私たちの手元にある、自身のアルバムに気づいて嫌そうな顔をする
「3ページで何があったのさ」
呆れるように言い放つ
「月島兄弟尊すぎて無理」
「なにいってんの、いくよ」
蛍にそう言われ、まだ100分の1も見られていないアルバムに後ろ髪を引かれながらも立ち上がった
私の様子を見たお母さんが
「また一緒に見ようね」
と言ってくれる
「はい!ぜひ!」
「見なくていいから」
蛍がボソっと言う
アルバムを閉じてお母さんに渡そうとすると、お母さんは1枚の写真を私に手渡した
「私この写真が一番のお気に入りなの。歩ちゃんにあげる
…蛍には内緒ね」
とお母さんが小声で言う
チャーミングなお母さんにキュンとして、私は蛍だけじゃなくて月島家を箱推ししようと心に決めた
蛍の後ろを歩きながら写真を見ると、芝生をバックに多分3歳頃の蛍が小学校中学年くらいのお兄さんに後ろから抱きついている写真だった
無理、破壊力
今と変わらず色素の薄い癖っ毛で、女の子のような可愛さ
眩しい笑顔
「はぅ」
思わず変な感嘆詞が口からこぼれる
「…なに?」
部屋に入って、振り向いた蛍が言う