第15章 BOOST
「これ…」
そこには蛍と同じ髪色、蛍とは違って真っ直ぐな髪質、恐竜の服を着た愛らしい少年が、赤ちゃんの蛍に頬ずりしている写真があった
その少年は、今のお母さんと同じように愛しげに目を細めている
「そう、明光」
溺愛お兄さんは、もうもはや蛍がこの世に生まれ落ちた瞬間からブラコン確定だったようだ
「お兄さん、めっちゃ嬉しそう」
「そうね、すっごい嬉しがってた。蛍はね、明光が小学校に入った年に産まれたの」
そう言われると、結構歳が離れてることに気づく
橘家は、私が3歳の時には既に下の妹が産まれていたけど、別に妹を待ち望んでた覚えもないし、嬉しがった記憶もない
気付けば、2人の妹はそこにいたって感じ
「…本当はね、もう少し早くから2人目が欲しいって思ってたの。明光が幼稚園に通うようになったら、ほとんどのお母さんは下の子を連れていたり、妊娠中だったりして…今思うと、結構辛かった」
「そうだったんですね」
「特に明光に申し訳ない気持ちが強くてね、あの子本当に優しい子でね、お友達の妹や弟をとっても可愛がったりしててね…この子をお兄ちゃんにしてあげたいって思ってたから、蛍がお腹に来てくれた時は本当嬉しかった」
蛍は…私の愛する人は皆に望まれて産まれて来たのだと思うと心の奥底が温かくなった
「お兄ちゃんになるよって言った時、お兄さんどんな感じでした?」
「うーん、それはいつ言ったかな…もう記憶が曖昧だけど、蛍が産まれて、初めて顔を見た時あの子泣いたのよ」
「泣いた?」
「うん、世界で一番可愛い僕の弟って言いながらポロポロ涙流してね、私も看護婦さんもみんなで貰い泣きしちゃった」
やばい、私も泣きそう
「蛍は幸せ者ですね」
「そうね、でも本当に幸せなのはやっぱり私かなって思う」
「お母さんですか?」
「うん、蛍を産んでしばらくした時に明光が私に言ったの。ママ、僕に蛍をくれてありがとうって…」
そう言いながらお母さんは涙ぐむ
もう無理だった
涙腺が崩壊して、ぬぐってもぬぐっても涙が止まらない
「やだ、歩ちゃんまで!ごめんね、なんか」
そう言ってお母さんも涙を拭う
「いえ、もう…本当尊すぎて」