第15章 BOOST
「うーん、そっち方面は全然詳しくねぇな。ただ、今飯で思い出したけど、入院してたあの総合病院!あの病院の飯の不味いのなんのって…あんなもん食ってたら、余計病気が悪化するわ!」
といって監督は豪快に笑った
総合病院の食事の味気なさは、まぁよく言われていることだけれども実際のところはよく知らない
「まぁ身体のことも気遣われてるんでしょうしね」
「食うことは生きることだ。病人から食う楽しみを奪うのはいただけねぇと思うんだけどな」
「ジジイは酒を控えろ!また倒れたらどうすんだ」
いつの間にやら猫又監督との電話を終えたコーチが、参戦してくる
「うっせぇ!酒我慢して数年生きながらえるくらいなら、さっさとくたばった方がマシってもんだ!」
と言いながら孫に食ってかかる監督は、まだまだくたばることはなさそうで、ホッとした
猫又監督に、日本でビーチを教えてくれている先生を紹介してもらえたようで、また春高の合間を縫って、翔陽とコーチはその先生に会いに行く約束をしたらしかった
いいなぁ…翔陽の方は収穫があったのに
私は総合病院のメシがまずいという自分となんら関係のないクレームを聞かされただけだった
我々がわいわいと盛り上がっていると、こちらに近づいてくる車に気づく
シルバーのプリウスが停車し、その中から小ざっぱりとした年嵩の男性が降りてきた
「烏養〜近くまで来たんで、お茶でも淹れてくれよ」
そう言いながらこちらに近づいてくる男性に向かって
「なんだなんだ、議員のお偉いさんが、こんなところに何の用事だ」
悪態をつきながらも、監督はとても嬉しそうだった
女子高生には馴染みはないが、どうやらこの男性は現役の仙台市議会議員で、烏養監督と高校のバレーボール部の元チームメイトということだった
「おう繋心もいたのか!見たぞ〜お前もジイさんの跡を継いでバレー部のコーチたぁ、烏養、立派な孫に育って幸せもんだなぁ」
コーチのことも知っているようで柔和な表情で語りかけている
「どこが立派なもんか、自分の孫なんか霞ヶ関にいるくせに」
監督が言うと、この男性の孫は官僚なのだとコーチが私たちに教えてくれた