第15章 BOOST
ー少し前の歩side
「ビーチの話さ、ちゃんとコーチに言ったほうがよくない?それにどうせ翔陽、なんのツテもないんやろ?コーチやったら、誰かビーチやってる人知ってるかもしれんし」
朝練が終わり、片付けをしながら翔陽に声をかける
「俺もそう思ってた。だから今日の練習終わり、坂ノ下商店行こうと思ってんだけどさ、お前もくるか?」
私もコーチに話を聞いて欲しかった
スポーツ栄養士について、コーチなら何か知っているだろうか
2人で坂ノ下商店に入ると
「日向、橘、なんか相談事か?」
コーチはそう言って読みかけの新聞を机に置いた
「卒業したらビーチの練習やってみたいです」
まずは翔陽が先に口を開く
「ビーチってビーチバレーか?」
「一年合宿で2対2の練習見てからずっと考えてました…
全部できるようにならなきゃって」
そう言って翔陽はコーチに出された椅子に腰掛け、ノートを取り出す
何かを書き殴ったノートを指でなぞりながら
「ビーチは広いコートをたった2人で守る」
とコーチに力説する
翔陽が冗談で言ってるわけじゃないということがコーチにも伝わり、コーチも
「時間はある
検討しよう!」
と答えてくれた
「で、橘は?俺はあいにくマネージャーの進路相談に乗れるほど、経験豊富じゃないんだが」
コーチは頭をポリポリと掻きながら、苦笑いする
「すみません、コーチはスポーツ栄養士ってご存じですか?」
「ああ…バレーじゃあんま聞かねぇけど、サッカーのクラブチームとかだといるかもしれねぇな」
「私、コーチが常々選手たちに仰ってる、ちゃんとした飯を食えっていう言葉、本当に大事だと思ってて、出来れば自分もやれることをやりたいって思ってるんです」
「なるほどなぁ…ただ、お前に紹介してやれるような学校も人物も今んとこ全然思い浮かばねぇわ、悪いな」
そう言った後、コーチは少し考えるような素振りをして、そして何かを思いついたように
「そうだ、お前ら今度のオフの日ジジイんとこに一緒にいくか?」
と言った。
ジジイ…つまり、烏養元監督のところだ
私たちは顔を見合わせ
「お願いしまーす!」
と声を揃えた。