第15章 BOOST
バレーボールを未来永劫、命尽きるまで当たり前に続けようとする奴らに囲まれて、見失っていたけれど
僕は今そんなこと決めなくてもいい
卒業したらきっと僕は進学するだろうけど、その中でバレーを続けるのかどうか
社会人になっても続けるのかどうか
それはその時の僕が決めてくれるはずだ
「ごちそうさまでした。…ありがとう、兄ちゃん」
照れ臭くて、食器を片付けながらボソッと言う
「なっ…!!!母さーん!!!!蛍が!!蛍が俺にありがとうって!!!!!!」
玄関に向かって兄が叫ぶ
「ちょ、やめなよ。近所迷惑でしょ、この酔っ払い」
「でもさ蛍、現実的なことアレコレ言ったけど、お前ん中に好きだって思う気持ちがあるなら、それは大事にしろよ」
兄ちゃんは最後にそう言った
そうして…久しぶりにぐっすりと眠って目が覚めると、デスクの上にラッピングされた箱とメッセージカードが置かれていた
"誕生日おめでとう 蛍"
「兄ちゃん…勝手に部屋に入んなよ」
包みを開けると、中身は恐竜の卵をモチーフにしたナイトライトだった
卵が割れていて、顔を出している恐竜と目があった
「好きだって思う気持ち…か」
それもきっと、その時抱えている色んなものと天秤にかけて、未来の僕が選び取るんだろう
だから僕は、目の前に与えられる選択肢をちゃんと見極めて、その時々にベストだと思う方へ進んでいけばいい
その先に自分の大切な人たちがいるなら、道に迷うことはないと分かっているから
「いってきまーす」
「あら、もういくの?」
母さんがキッチンから出てきた
そして
「お誕生日おめでとう」
と声をかけてくれた
17にもなって母親に誕生日を祝われて、なんだか心の奥があったかくなったのが照れ臭くて、わざとぶっきらぼうに
「ありがと」
と言った