第15章 BOOST
体育祭が終わってしばらくして、歩と日向が一緒に坂ノ下商店で烏養コーチに本格的に自分達の進路を伝えたことで、もしかして…と頭のどこかで思っていた日向のビーチバレー転向が、いよいよ現実味を帯びてきた
…ある日の部活終わり、たまたま日向と2人になったタイミングで珍しく僕から口を開いた
「君、ビーチって本気?」
特に隠すつもりもないのだろう、日向は
「冗談で行きませんて」
と答える
「またバカが暴走したのかと思って」
「お前も影山も暴言挟まないと死ぬ病なの???」
「一緒にすんなよ」
「おれは一人じゃ勝てない」
…
「でも強い場所には強いセッターが居るだろ
おれは強いセッターに跳ばしてもらうために、強い場所まで行けるようになるんだ」
そう語る日向の目はここではないどこか遠く、そう未来を見ていることに気づかされ、ハッとする
ポタッ…
また黒いシミが広がる
ああ、そうかこれは…焦りだ
そうだ、いつだって僕はコイツを見ていると
なんかやんなきゃいけない気持ちになる
日向にしろ歩にしろ、目指すべき目標や取るべき手段が明確になって、ソッチに向かって盲目的に突き進むのを間近で見ていると、僕はどうなりたいんだろうと、ふと考えてしまう
らしくもない…
今日、歩は谷地さんと先に帰ったから、1人帰路に着く
9月も後半、ともなると夜の風が心地いい
ふと、月を見上げて立ち止まる
月は何故輝くのか
月はそれ自身が輝いているのではなく、太陽からの光を反射して輝く
自分自身で光り輝くことのできない月は…
太陽のことをどう思っているのだろう