第15章 BOOST
蓋を開けると、彩りのバランスが取れた美味しそうな中身が現れた
「いただきます」
両手を合わせて、彼女が僕のために作ってくれたお弁当を少しずつ隅々まで味わうように咀嚼する
「蛍、私管理栄養士の仕事調べてみようと思ってる」
唐突に歩が言う
「それが今日のプレゼンのテーマ?…別に、君に合ってると思うけど」
それから歩はポツポツと、進路について実は結構前から悩んでたことを教えてくれた
タイムリーに相談された記憶がないのが若干気にかかるけど、同じ1年生の僕に相談したところで、きっと悩みは解決しなかっただろう
将来の目標や夢に悩む中、日向に言われた今やりたいことを考え始めて、なんとなくフワっと、みんなの身体を作るちゃんとした飯を作るっていう結論に至ったらしい
そしてそこから武田先生の進路相談で、スポーツ栄養士の存在を知って頭がこんがらがって一旦寝た(これが先日僕が発見した歩)後に、影山と話して全てが繋がったと言った
日本代表のスポーツ栄養士
それについて色々と調べてみる、これが今の彼女のやりたいことになったようだ
それはいい、別に異論はないけれど、何故そこで影山が登場するわけ
一旦寝た後に、いつ?!影山と話をしたのか
若干不機嫌になる僕に気づかず、彼女は話を続ける
さっきまでのプレゼンの勢いはなく、何故か若干恥ずかしがりながら
「でも、みんなって言いながらやっぱり蛍のためにご飯を作りたい、ちゃんとしたご飯を蛍とか…その、将来の子ども?…とかに、毎日心も身体もお腹いっぱいって思えるようなご飯作りたいのが1番。そんでその気持ちが抑え切れず、誕生日にあげようって思ってラッピングされてあった、お弁当箱を出してしまったってゆー」
「はぁ…本当ずるい」
「え?!ずるい要素あった今?!」
「大アリだよバカ…そんなこと言われたら影山とかどうだってよくなるんだから」
そして彼女のプレゼンは大成功
となったわけだが、僕の胸にポツン…と黒い墨のようなものが、ほんの一滴垂らされて、シミのように広がる
これは影山への嫉妬とかそんなんじゃない
この気持ちは…一体何なのだろう