第15章 BOOST
ー月島side
歩を迎えに家の前まで迎えにくるのも日常になり、彼女が出てくるまでの間、ヘッドフォンから流れるお気に入りの音楽を聴きながら待つのが、僕の朝のルーティーン
そして決まって歩は後ろからゆっくり近づき、僕のヘッドフォンをずらして、おはよ!と声をかけてくる
そして、今日も
「おはよ!」
お気に入りのメロディが途切れ、愛しい人の声が聞こえる
ああそうか、ここまでがルーティーンか
「おはよう」
僕が挨拶を返すと、彼女はニッコリと笑った
その笑顔を見ながらふと思ったけど、歩はあまりイライラしない
機嫌が悪くて、こっちが色々気を揉む…なんて経験はあまりない
でも、今日の歩はその中でも、ひときわご機嫌な気がする
「なんか、いいことあった?」
と訊ねる僕に、待ってましたと言わんばかりに
「聞いてくれる?!今日、3日目の私やねん!!起きてからずっと蛍にプレゼンしたくてたまらんかったん!!」
と歩は目を輝かせる
やっぱ変わってるコノヒト
いいことがあったとして、それを彼氏に話したい
ここまでの気持ちは女子高生として正常
でもそれをプレゼンしようとしてくるのは、本当に歩らしいというか何というか…
で、ご存じ!3日目の私とか言われても謎だし
「プレゼン?それ長くなる?」
「ある程度」
「じゃあ、今じゃなくてお昼…ご飯食べながらにしない?」
「元よりそのつもりです」
「元よりそのつもりなんだ」
歩は大きめの四角い手提げカバンをヒョコっと出して
「一緒に食べようと思って蛍の分も作ったー!天気もいいし、屋上で食べよ?」
と嬉しそうにする
ああ、もう…
「屋上じゃなくて部室にしない?」
とニヤニヤしながら言うと
「も、なんですぐ密室にいこうとすんのっ!」
と頬を赤らめる
結局、密室は却下され、僕たちは若干ほかの生徒たちもいる屋上で歩のお弁当を食べることにした
まず驚いたのがお弁当箱
この前までお弁当を作ってくれる時は、プラスチックのタッパー的なものだったのが、歩とお揃いの漆塗りの曲げワッパに変わっている
「これ…」
と手にとった瞬間、歩はゴメンッッ!と急に頭を下げた