第15章 BOOST
「まぁ…俺はとりあえず歩が幸せならそれでいい」
「は?お前どのポジションからモノ言ってんだ」
「どのって…ええ…兄?とか」
「どっちかってーと弟だろうが」
「あ、お前それ見た目判断だろ?!」
「中身もだボケェ!」
全速力で走りながら言い争いを続ける
ひとしきり走り終えて体育館に戻ると、照明がついている
誰か来たのか、もしくは彼女が目を覚ましたのか
と、一瞬の隙をついて日向がダッシュする
「俺のっ勝ちだぁぁぁ!」
負けじと体育館に雪崩れ込む
「させるかぁぁぁー!!!」
ドガシャーン
絡まりながら倒れ込む俺たちを、目覚めた橘さんと月島が冷めた目で見つめてくる
クッソ…月島いたのかよ
「聞いてくれよ歩!」
言いながら日向が2人の方に進んでいく
「俺がさー!「歩こんなとこで何してんだーーー!風邪ひくぞーーー!」って近づいてったら影山(コイツ)がさー「おい、やめとけよ、疲れてんだろ…そっとしといてやれよ。先、走りに行くぞ」とか言っちゃって、わざわざロッカーからジャージ取ってきちゃって、歩に自分のジャージかけちゃってー」
「クソボケドチビが!しょーもねぇことベラベラ喋ってんじゃねーぞ!」
「はは、王様照れちゃって可愛い!」
「うるせえ!日向ボケェ!」
言い争う俺らを見ながら、橘さんが
「影山くん、ありがとう」
と少し照れたような顔で言う
どうして泣いていたのかが気になって、でもこの場で言うのはなんとなく違うかなと思って、家に帰ってから電話を掛けた
別に声が聴きたいわけじゃない
なんか悩んでんなら力になりたいと思うだけだ
下心なんてないと自分に言い聞かせ、ワンコール…ツーコール
「もしもし?影山くん?」
「おお」
「どうしたん?てか、今日ありがとう!でも起こしてくれたらよかったのに」
「いや…あんまり気持ちよさそうに大の字で寝てたから」
「体育館の真ん中で大の字で寝るJKやばない?」
「いいだろ別に。橘さんがヤベェのは今に始まったわけじゃねーし」
「ちょ、どーゆーこと?!」
「フフ…悪ぃ」
「そういえば、電話なんやった?」
「ああ…別に言いにくかったら言わなくていい…ただ、今日もしかして泣いてたのかと思って」