第15章 BOOST
「橘さん、困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している
…受け売りですけどね」
そういって笑う先生を見て涙が再び溢れた
ポロポロポロポロ
「えええええ!!!」
「ウワァァァン!!3時間後に止まるとかゆって!先生が泣かしてくるーー!」
「すみません!!」
そう言いつつ、私の脳裏には3日後、前を向いて走り出す自分の姿がはっきりと思い描かれた
「あ…てか先生、翔陽にはこのこと内緒で」
「?」
「人の進路、勝手に先生にベラベラと…多分翔陽は自分の口で、先生に説明しにくると思うから」
そう言うと先生はコクリと頷いた
そして…
「今日はなんだか橘さんを泣かせるばっかりで、教師として少しも役に立ってないですね」
と言った
「そんなことないです」
「一応僕が高校の教師という立場から一つ君に案内できることがあるとすれば、橘さん、管理栄養士はご存知ですか?」
管理栄養士と栄養士の違いは分からんけど、多分保育園とか病院とかの献立を考える人…っていうイメージや
「知ってはいます…けど」
そう言って私はそのまま知っているイメージを話した
「そうですね。そういう職業に就く人も多いでしょう。でも最近は、管理栄養士の資格を活かして、スポーツチームでアスリートの献立を考えたり栄養管理を行う、公認スポーツ栄養士というような仕事もあるようですよ」
もやもやと曇っていた視界に、スーッと一筋の光が差したような気がした
「君がその職業を目指すのかは分かりません。でも知識として選択肢を増やしておくのはいいと思いますよ」
先生との面談を終えた私は、瞼はバンバンに腫れてるし、グッタリと憔悴しきってるしで、もう体育祭の準備に戻ることも出来ず、何故かだだっぴろい体育館の真ん中で大の字になって天井を見上げた
そしてその天井を見上げているうちに、いつの間にやら瞼を閉じていた
「…歩…ねぇってば、…歩!!」
「はいいっ!!」
名前を呼ばれて跳ね起きたものの、体育館の天井のライトが眩しくて、視界が真っ白にぼやけている
徐々に視界を取り戻すと…