第15章 BOOST
「そーかよ、で?お前の今やりたいことは?」
「仲間のために出来ることをやりたい…つまり、翔陽が1人になってもずっと、ちゃんとした飯を食えるようにしてあげたい」
それがどんな道に続くかは分からん
それでも私は今、こうして世界に羽ばたこうとする友人のために自分の料理で何か支えることが出来るのであれば、やってみたいと心から思った
「でもよぉ歩、前にGWの合宿ん時の献立、あれ考えてくれたの歩だろ?お前にとっちゃそんなたいそうなことじゃなくね?」
「全然大層やわ!あん時は2泊だけやし、しかもやっちゃんと私が作る前提やったけど、今度は毎日の献立×3食+翔陽が調理やねんから」
「た…確かに」
「しかもそれに加えて、新鮮な野菜の選び方から何から何まで全て叩き込む必要があるし」
「出来るかなぁ…俺」
「大丈夫、それを続けられるようにすんのが私の仕事やろ?!俄然やる気出てきたわ」
手元で包丁をクルリと回す
「ヒィィ!歩のやる気…こぇぇ」
「怖くないわ!」
私たちのやりとりを見て翔陽のお母さんもクスクスと笑い出す
「翔陽さ、もし今日が地球最後の日やったら何食べる?」
「ええっ急に?!そりゃもうTKGとカリカリに焼かさった鮭と、なめこ汁に決まってんだろ!」
即答する翔陽の言葉にお母さんがハッとする
「…もしかしてそれ、日向家のお袋の味?」
「そう言われればそうかも、最後の飯って聞かれたら母ちゃんが作ってくれる飯が浮かんだな」
屈託のない笑みを見せる翔陽
「そんでいいんやと思う」
「お?」
「私らは食べたもんで出来てるってこと。身体も…心も。そやから健康的なメニューを必死で毎日作るより、たまにはお母さんのご飯食べに帰ってくるんやで」
「おお、そうか!最終TKGでいいってことだな!てか母ちゃん、なめこ汁の話してたらその口になってきたから、今晩なめこ汁してくれよ!歩食ってくだろ?!」
お母さんは目元を拭うと
「分かった、今晩はなめこ汁にしようね」
と答えた
翔陽に意図が伝わったかは不明やけど、帰り際に翔陽のお母さんが、あの子の友達になってくれてありがとうと言って、私の手を握った。
私は
「こちらこそ」
と返事をして、翔陽のお母さんの手を強く握り返した。