第15章 BOOST
でも翔陽は違った
「なるほど、ビーチバレーな!」
は?ビーチバレー?
そういや翔陽がビーチバレーしたがってるとか、やっちゃんが言ってたような
「ビーチバレー最近ハマってんの?」
「いや、みんなで去年の夏に泳ぎに行ったろ?あん時やったのが最初で最後」
「へ?」
「…俺がバレーで日本代表になって金メダル何個も取るためには、全部出来る様にならなくちゃいけなくて、そんで、ビーチで修行する必要があるって…ずっと考えてたんだ」
思いもよらなかった
翔陽がコートを出て、砂の上に行くなんて
でも、蛍はもしかしたら日向は競技としてビーチバレーをするつもりじゃないかって言ってた気もする
てか翔陽が将来の目標のために、ここまで具体的な手段をしっかり決めてることにも驚いた
なんなら、翔陽は何も考えてなくていいなって思ってたぐらいやのに
「それ…いつ行くつもりなん?」
「まだ具体的には決めてないけど、下準備もあるから高校卒業してからにはなると思う。だから母ちゃんがいなくてもちゃんとした飯作れるように今からなっときたいなってのもあって」
「そうなん?一人暮らしするん?前にみんなでビーチバレーした海岸ならここから通えるやろ?」
「そーゆーんじゃない」
「どーゆーん?」
「ちゃんとビーチの世界でも活躍する選手になんなきゃ意味ないから…俺、多分それがどこでもいくと思う。地球の裏側でも」
「…?え、地球の裏…え?」
翔陽の口から出た突拍子もない話に頭の理解が追いつかない
でも翔陽のお母さんはそんな息子からある程度の話を聞かされてるのか、動じることなく包丁を動かす
「すごいなぁ翔陽」
「なにがだ、お前の方がすごいだろ」
「いや…私には将来の目標も何も…」
「だったら逆アドバイスだぜ、将来将来って大人になった時の心配ばっかして、今がつまんなくなるなんて勿体ないぞ」
「つまんなくはないし」
「だろ?じゃあ今をもっと楽しめよ、歩お前考えすぎだぞ。大人の自分じゃなくて今のお前がやりたいって思うこと全力でやってみろよ」
「翔陽…」
1年前、中学生と間違えた翔陽が頼りになる存在に成長したことに胸が熱くなり…ポロリと一筋の涙が頰を伝った
「なっ?!泣くなよ!悪かったよ!いやそんなえらそうに言うつもりなくて…」
「ちゃうし…玉ねぎやし」