第3章 春高予選
最後の東京遠征から数日後
今日もカレンダーに×印をつける
本選まであと2週間…か
みんな新しい武器を磨いて毎日頑張っている
ふとスマホを見る
「あ、今日ゲームの発売日やん!研磨さんに連絡せんと」
私は早めにお風呂に入って自分の部屋に戻る
ベッドの上には最新のゲームをダウンロードしたゲーム機とヘッドフォン
そしてスマホの画面には新着メッセージの通知
“孤爪 研磨”
ダウンロードしたよ
いいタイミングで電話して
絵文字もスタンプもないシンプルなメッセージ
私みたいやな
研磨さんに発信する
プルルルル…
『はい、歩?」
「こんばんは、研磨さん。お風呂入ってて遅くなってごめんなさい」
『大丈夫、おれも今始めたとこ』
「わー、めっちゃ楽しみ!最高ですね!」
『女の子とこんな風にゲームするの、初めてなんだけど』
「そうなんですか?」
『歩は慣れてそうだけど、お兄ちゃんとかいるの?』
「いいえ、三姉妹の長女です」
『え?!そうなの?!』
「尼崎住んでた時に近所に一個上の双子の男の子がおって、いっつもその子らと遊んでたんで、男の子の遊びばっかりで」
『そうなんだ』
「研磨さんいつもどのくらいでクリアしますか?」
『結構詰めてやるからな〜早いかも。でも…』
「でも?」
『あんまりすぐにクリアしたら、つまんないよね』
「まぁ、そうですね」
『負けるの嫌だけど、勝ち続けたら終わりがくるから。ゲームオーバーよりゲームクリアの方が嫌じゃない?』
「パラドックス!なんか黒尾さんが言ってたこと、ちょっと分かるかも」
『クロが何か言ってたの?』
「研磨さんのこと好きにならへん方がいいって」
『どうして?』
「黒尾さんがどういうつもりで言ったかは分かりませんけど、なんとなく告白して付き合って手に入れたら、興味失われて捨てられそうな気がします」
『ハハハハ
…歩は面白いね、翔陽に似てる』
「え?!翔陽?!親切な中学生ってことですか?」
『いやなにそれ、意味わかんないんだけど』
「翔陽と初めて会った日、私転校初日で迷子になってて…そしたら、高校まで案内してくれて、めっちゃ親切な中学生やな〜って思ったら同じ高校やったってゆう」
『ハハハ、もう久しぶりにこんな笑ったんだけど』