第15章 BOOST
実際の売り場を見てみると、そこには嶋田さんの手書きで
『これであなたの子どももトップアスリート』と書かれたポップがつけられていた。
「なぁ、これさ歩が考えたんだって」
レシピのチラシを持ちながら、翔陽がお母さんに向かって言う
「へぇ、すごいわね。どれどれ…」
4人で沢山買い物をして、車に積み込み、カートを戻しに行く途中翔陽のお母さんがふと
「歩ちゃんありがとうね」
と呟いた
「お安い御用ですよ」
「春高のあと…しばらくあの子元気なくて…体調管理ができてなかった自分をすごく責めてたの」
「そうだったんですか」
「それに体調不良って…親の責任でもある気がして、まだ高校生の息子だから。私がもっとちゃんとしてあげてたらって…」
「お母さんのせいじゃないですよ、勿論翔陽のせいでもないです。でも…運が悪かったで片付けてしまえばそこまでですけど、翔陽はそうしなかった」
人事を尽くして天命を待つ
そうやって翔陽は立ち直っていくのだろう
「私も母親としてできることはしてあげたい。だから歩ちゃん、よろしくね」
「はいっ!私もマネージャーとして出来ることは何でもしてあげたいです」
翔陽の家に到着すると、みんなで手を洗い、調理を始めた
「歩、料理の秘訣とかあるのか?」
翔陽は野菜を洗いながら言う
「翔陽、遠きに行くは必ず邇き(ちかき)よりすやろ?
今は多分技術が進歩してるから、欲しい栄養素とかをピンポイントでサプリから摂取したりもできるやん?でもやっぱり私は旬のものを素材を活かしたまま食べるのが1番心も身体も元気なるって思うねん」
「確かに」
「でもまぁ下処理とかめんどいやつもあるし、何事も無理しすぎひんってのが大事やと思うで。本来はバレーボールをする上で強靭な肉体を作るってのが目的やのに、あくまでも手段であるはずの健康的で丁寧な料理を毎日摂るってゆーことを目的化すると良くないと思う」
「むずい」
「バレーとして考えたら?翔陽は何個も金メダル獲るんやろ?そのための手段やったはずのものが目的化してしまったら意味ないやろ?」
私は走り込みのようなものをイメージしていた
バレーの強者になるために例えば毎日10km走るのが手段として、いつの間にか10km走ることが目標になってしまうような