第15章 BOOST
「言ったよな?さっき電話で」
「ああ…うん、もう家の前やったけどな」
「もうこの子は!自分のことしか考えてなくて!本当ごめんね?大丈夫だった?予定とか…ほら月島君と」
翔陽のお母さんがニヤニヤしながら言う
「いや、大丈夫です。」
「2人本当に美男美女でお似合いで羨ましい。翔陽なんてもう、バレーバレーで浮いた一つの話もないから」
「なっ、いいじゃんかよ!別に!世界で活躍するプレーヤーになったら、女の子の1人や2人向こうから寄ってくるもんね」
「あらそう、じゃあ気長に待つことにするわ」
そう言って翔陽のお母さんはカラカラと笑った
この家族は本当に明るい
日向って名字がドンピシャで合ってる
車内では会話が途切れないまま、車は商店街に入り、当たり前のようにしまだマートの駐車場に停車した
店内に入ると、ここの主である嶋田さんを探す
「あ!嶋田さーーん!」
首から大安売りのタスキをかけた、嶋田さんがこちらを向く
「おっ!日向!それに歩ちゃん、いらっしゃい。珍しいね、買い出し?」
「歩に飯教えて貰おうと思って」
「そっか、ちょうど今日はいい胸肉が安売りだよ」
嶋田さんはポケットに忍ばせていたチラシを手渡してきた
「空はジャンフロの練習にきてますか?」
「うん、来てるよ。忠より器用だから、それなりにカタチになるのは早かったけど、忠みたいにサーブという武器一本に対する執着がないから、忠に拾われてることが多いかな」
2人の弟子は夜な夜なしまだマートの駐車場で特訓を続けているようだ
「世界で活躍するトップアスリートを内側からも外側からも支え続けた、地元優良企業・しまだマート!とか言って特集される日も近いんじゃないですか」
「はは、そうなればいいけどね。そういえば歩ちゃんのレシピのおかげで、最近の売り上げ鰻登りだよ!商才あるね〜高校卒業したらうちに就職しなよ」
レシピ…とは、GWの合宿時にしまだマートでの値切りをギリギリまで交渉する中で提案したもので、【強豪烏野を春高バレーベスト8に導いたマネージャー飯】と題して、嶋田さんにいくつかレシピを渡していた。
嶋田さんはそのレシピを売り場に置き、誰でも持ち帰れるようにして、関連する食材を同じ場所に陳列するようにした所、売上アップに貢献できたようだ。