第15章 BOOST
〈人が生きる本質的な基盤として孤独があり、愛とは運命によってその孤独が試みられることに対する人間の反抗に他ならない。〉
…ベッドに寝そべりながら赤葦さんに貰った本を捲る
めっちゃ難しいことが哲学的に書かれていて、どういう意図で私にこの本をくれたんやろうって感じ
「愛とは孤独に対する人間の反抗…かぁ…奥深い」
夏合宿が終わって数日
去年は何もかもが初めてやったけど、今年は次に何があるかって分かってるからか毎日がすごいスピードで過ぎて行く
IHに合宿にとイベントに追われて、気付けば夏休みももうあと少し
合宿を通して成長していくみんなや、将来について明確なビジョンを持つ人たちが増えていく中、夏休みが始まる前となんら成長していない自分に少し腹が立つ
〜♪
ん?
机の上に置いてあったスマホが鳴る
ベッドから降りてディスプレイを見ると
『日向 翔陽』
電話とか珍しい
一体なんやろ
「もしもし?」
「おー歩何やってんだ」
「なんも。翔陽は?」
「今お前んちの前にいる」
「え、なんで?」
「飯、教えてくれよ」
そういや前にそんな話をしてたかもしれん
1人でゴロゴロしてるとなんか下がるから、翔陽と一緒にご飯でも作ったら少しは気が紛れるかも
「5秒で用意するわ」
そう言って電話を切り、トートバッグの中に必要なものを入れると、家を飛び出した
と、そこには一台の車
当然チャリに跨った翔陽が待ってるって思ってたから、私はキョロキョロと辺りを見回す
すると車の後部座席の窓が降り、翔陽が顔を出した
「おーい歩〜!」
「え、待って。どーゆー状況?!」
言いながら後部座席に近づき、ドアを開けると、運転席に翔陽のお母さん、助手席に妹の夏ちゃんが座っていた
「歩ちゃんこんにちは、さ、さ、乗って」
「え…あ…はい、お邪魔します」
そう言って後部座席に乗り込んだ
「え、どこ行くんですか?」
状況が読めない私に、翔陽のお母さんが
「もしかしてこの子何の説明もなく?!こら翔陽!歩ちゃんが一緒にご飯作ってくれるって、ちゃんと事前に了解とってなかったの?!」