第14章 NEXT LEVEL
赤葦side
「赤葦さん、ちょっといいですか」
自主練で汗を流した後、珍しく月島に呼び止められた
「どうした?バレーのことじゃ…ないよな?」
「…僕たちが来る前歩と2人でしたよね?」
「そうだけど、それが何?別に何もしてないけど」
わざと煽るように言う
「…赤葦さんは歩のこと、どう思ってるんですか?」
「そんなこと聞いてどうすんの?お前は彼女と…歩ちゃんと付き合ってんだろ?」
「…そうですけど…」
「じゃあ俺の気持ちなんて聞いても意味ないじゃん。それとも…俺が歩ちゃんのこと好きだって言ったら、譲ってくれるわけ?」
「それは無理です」
月島らしからぬ必死さに思わず笑みが溢れる
「だろ?なら俺の気持ちなんか気にせず、しっかり彼女を大切にしてやればいいんじゃない」
そう言って月島の肩をポンと叩く
「…僕、多分自信ないんだと思います」
「…へぇ、お前がね」
「歩の気持ちを疑ってるとか、そんなんじゃないんですけど。正直僕みたいな人間が、敵うわけないって思う人がいて…そんな人たちが歩のことを本気で奪いに来たらって考えると」
月島はタッパもあって面も良い
頭も良い上に、スポーツも出来る…そんで歩ちゃんの寵愛を独り占めしてるくせに、この卑屈さはどこから来るんだろう。
「月島は俺に敵うわけないって思ってくれてるわけ?」
「…そりゃ思いますよ」
「それは光栄だな。でも多分恋愛ってそんな簡単なもんじゃないんだろうな?」
「え?」
「誰よりも素晴らしい優れた人間が選ばれるなら、たった1人をみんなで奪い合うことになるじゃん。だから、自分より優れてるとか敵わないとか…恋愛にそんなん関係ないんだよ。好きになったら、ソイツが優れてようがダメであろうが、全てひっくるめて愛おしい。そんで…歩ちゃんが選んだのはお前、そうだろ?」
「…やっぱり赤葦さんには敵いません」
「どうも、でもあんまウジウジしてたらマジで奪うぞ」
「…渡しません」
コイツが意外と熱い奴だってことは知ってる
体育館を後にした俺は、何故だか少し笑っている自分に驚いた
なんか恋敵を励ます感じになったな
でもまぁ俺は俺でそう簡単に諦められないけど…