第14章 NEXT LEVEL
「それに…歩ちゃんに読んでほしいって思ってたから」
「そうなんですか?それ、どんな内容なんですか?」
「うーん…愛と孤独について…かな?」
そう言って赤葦さんは立ち上がると、足下に転がっていたボールを掴んでポーンポーンと高くオーバーハンドでトスをし始めた
見惚れるほど正確で高いトスが天井の照明に吸い込まれていく
「赤葦さん…もう、バレーやんないんですか」
気づけばそう口にしていた
「え?」
私は何を言っているんだろう、今まさにバレーをしてるこの人に
「あ、いや…その」
「…そうだね、多分今年が俺にとってバレーをする最後の夏だろうね」
「やっぱり…もう続けないんですね」
「俺は梟谷高校のセッターだった、それだけだよ」
赤葦さんはポーンと一際高くトスを上げると、キュッと床を鳴らして飛び上がり、落ちてきたボールを打ち下ろした
バーンと音がしてボールが床に転がる
「でもまぁだからって手加減はしないけどね」
そう言い放つ赤葦さんにドキッとする
当たり前だ
高校でバレーを辞めるからと言って、今が真剣なことに何ら変わりはない
赤葦さんは引退するその日まで、全力でセッターを務め上げるのだろう
ふいに体育館の外が騒がしくなる
「赤葦さん、読書はさせてもらえなそうですね」
「…みたいだね」
ガラガラと勢いよく扉が開けられ
「アカーシさん!!!俺にトスあげてください!」
「俺も!俺も!で、ツッキーブロック跳んでよね」
「は?指図しないでくれる?」
翔陽とリエーフ君、そして蛍が体育館の中に入ってきた
バレーボールを続けない人生
それでもこうして次の世代に引き継がれていって、その想いは途絶えることなく続いていくということを改めて感じた