第14章 NEXT LEVEL
私は赤葦さんから貰った本を、タオルと一緒に体育館の端に置き、ボール出しの準備を始めた
翔陽が呼んだのか蛍が呼んだのか、烏野の1年生たちも練習に加わって賑やかになる
シューズと床が擦れる音、ボールが弾む音が第3体育館に響く
ここに合宿に来れるのも来年が最後か…
ボール出しをしながら、翔陽と目が合って、私はその時
翔陽は先のこととか考えたり悩んだりしなさそーでいいなぁ
って思ったけど、後々そうではなかったことを思い知ることになる
自主練が終わり、お風呂に向かうとちょうどやっちゃんとりなちゃんが上がってきた所だった
「歩ちゃん、今から?遅かったね」
「もー第3体育館白熱しすぎてさ〜、初日からこれで大丈夫かってぐらい」
「お疲れさま〜先に部屋戻ってるね」
「うん、あ、りなちゃん良かったらやっちゃんと同じ部屋で待ってて!ゆっくり喋ろ?」
「分かった、そしたらやっちゃんたちの部屋で待ってるね」
「ダッシュでお風呂入ってくるわ!」
去年は蛍にキスされたのをかおりさんに目撃されてて、尋問された夜の女子会
今回はりなちゃんの好きな人を聞き出して、根掘り葉掘り話を聞くつもりでいる
楽しみやな〜誰なんやろう、好きな人って。
3年は研磨さんに山本さんに福永さん
2年はリエーフくんに柴山くんに…
大急ぎで入浴を済ませ、半乾きの髪をグルグルとタオルで巻き付けて、女子部屋へと急ぐ
「お待たせ!!」
巻きつけたタオルを外して、髪をガシガシと拭きながら部屋に入ると
「え、はや!ちょ、歩ちゃん髪ビショビショだよ?」
やっちゃんが近づいてきてタオルで髪を拭いてくれる
「夏やし大丈夫やろ」
「そんなに急がなくても、ちゃんと待ってるのに」
私とやっちゃんのやりとりを見ていたりなちゃんがクスクスと笑い出す
「?どしたん」
「いや…なんか意外だなって」
「何が?」
「歩ちゃんは見た感じ、凄いしっかりしてそうなのに、やっちゃんといるとそんな感じなんだね」
「そうだよ、歩ちゃんは基本テキパキしてるけど、こういうトコあるんだよ」