第14章 NEXT LEVEL
ー歩side
宮城からの長旅で固まった身体をほぐすように、バスから降りてグーっと伸びをする
自然豊かな森然高校の周辺では、蛍のボソボソ声なんて掻き消されるくらいのボリュームで蝉が鳴いている
「え?!なんて?!」
「だから…気をつけてねって」
「気をつける?何に?」
蛍はハァと溜息を一つつくと、私の頬を片手でムギュっと潰しながら
「こーゆー、隙だらけのとこ」
って言ってくる
もう黒尾さんも木兎さんも卒業したんやから、私になんかしてくる人なんか…と一瞬、ディズニーランドで赤葦さんと口付けた映像が甦って、慌てて首を振る
「大丈夫やもん!」
「ほんとかなぁ」
私たちは長い階段を荷物を持って上がり、森然高校の体育館に向かった
「ちわーーーーす!!!!」
翔陽と田中さんの大声に、体育館の中にいた他校の生徒たちが一斉にこちらを見る
烏野以外の高校はみんな都内近郊だから、もう既に集合していて私たちが1番最後だった
「日向〜!橘〜!」
リエーフくんがこちらに気づいて、ブンブンと手を振ってくる
「おつー!」
その向こうで音駒のマネージャーのりなちゃんが小さく手を振っている
ゴールデンウイークの練習試合では一悶着あったけど、今はすっかり仲良くなって連絡先も交換していた
烏野がアップをしている途中に、森然高校VS梟谷高校の試合が先に始まった
準備をしながら、その様子を見ていてあることに気づいた
赤葦さん…なんか元気ないな
今日も今日とて赤葦さんのセットは正確やけど、なんか元気ない
赤葦さんが、ってゆーか梟谷が元気ない
というより木兎さんがおらんって感じ
赤葦さんは感情が表に出るタイプではないけど、今思い返すと、木兎さんにトスを上げる赤葦さんは楽しそうだったのかもしれない