第14章 NEXT LEVEL
1年前のあの合宿
大袈裟に言えば僕のバレー観が根底から覆った
木兎さんと黒尾さんに誘われて…いや、半ば無理矢理連行されて、自主練に付き合わされて…木兎さんにはっきり言われた
バレーが楽しくないのは僕が下手くそだからだって
若干イラッとはしたけど、図星だった
あの頃の僕は、兄ちゃんに勝手に期待して、ツラい嘘つかせて、勝手に失望して…いつも何かにイラついてた
自分がバレーを頑張らないことへの理由というか言い訳というか、いつもそういうものを考えてた気がする
今となってはバレーに本気になって、自分自身に失望するのが怖かっただけなんだって分かるけど、あの時はそういう本当の自分の気持ちみたいなものにも目を背けてたのだろう
木兎さん、黒尾さん、赤葦さんとの練習は本当面倒でキツかったけど、それと同じかそれ以上に得るものも大きかった
木兎さんという天才アタッカーをブロック練習の相手に使えたこと
黒尾さんというミドルブロッカーの師匠に出会えたこと
赤葦さんという影山と違って意思疎通可能かつテクニックも凄まじいセッターと共に練習できたこと
あの時間がなければ今の僕はないってハッキリ言い切れる
絶対本人たちには言ってやらないけど
そしてあの合宿の時、初めて歩にキスした
その時の僕はまだ歩への気持ちがどういうものなのか自分でもよく分からなかった
いや、好きだったんだろう…初めから
あれから1年か…
「蛍、聞いてる?」
僕の顔を覗き込むように歩が言う
「うん、集合時間デショ」
「何よ、聞いてんのやったらリアクションしてよ」
「いや…去年の合宿からもう1年なんだって思って」
「そやな、早いなぁ」
「初めてキスしてから1年」
ボソッと耳元で言うと、歩の顔がボンッと赤くなる
「ちょ!!!!蛍!!!!何で急にそんなん言うの!」
「事実じゃん」
「あれは蛍が勝手に…」
「まぁそうだね、じゃあ今年は歩からしてもらおうかな」
ニヤニヤしながら言うと、歩は
「合宿に集中!」
と僕を嗜める