第3章 春高予選
10月になり代表決定戦前、最後の東京遠征
ここで出来る限りのことをして10月の代表決定戦に挑む
「歩、翔陽に聞いたんだけど歩もゲームするの?」
珍しく研磨さんに話しかけられた
しかもいつの間にか名前で呼ばれてる
「しますよ!特にもうすぐ新作出るあのシリーズはずっとやってます」
「オンラインは?」
「しますよ、ヘッドホンつけて」
「まじ?!連絡先教えて!一緒にやろ!」
小学生が、今度俺んちでサッカーしようぜみたいなノリで誘ってくる研磨さんが面白くて、噴き出す
「ハハ、研磨さん意外ですね?なんかこうグイグイくんの」
「あ、ごめん」
「全然いいです!私も周りにやってる子いないんで、電話しながらやりましょう!新作出たらすぐやりましょうね。あ、でもゴミ捨て場の決戦かかってるんで、バレーの練習は疎かにしちゃダメですよ」
「敵チームの心配なんて余裕だね」
「音駒は敵じゃないですよ」
「じゃあ、何?」
「何ですかね?」
「ふふ…歩は面白いね」
「今そんなオモロイこと言ってましたか?」
研磨さんはニコニコしながら私を見る
ニコニコしてるけど、なんか目が笑ってないというか…
少し怖いような気がした
面白くなくなったらすぐにでも捨てられそうな…
「研磨!」
翔陽が走ってきて
「さすがに10月ともなると寒いな」
「上着、着なよ」
他愛もない話をしている
「翔陽は面白いから、やってみたいなって思うよ。
次がない、負けたら即ゲームオーバーの試合」
「うん、やろう。次がない試合」
大地さんと黒尾さんもオレンジコートでの再会を約束し、私たちは遠征合宿の全日程を終えた
あとは本選まで自分たちの力で頑張るだけ
「歩ちゃん」
「あ、黒尾さんお疲れ様です」
「ほんっと、全く連絡してくんないよね」
「いや、もう本当それどころでは」
「俺はそれレベルってことね」
「そうゆーわけでは…」
「あんまり蔑ろにすると、泣いちゃうよ?」
「してませんよ、そんなに言うなら黒尾さんから連絡してくださいよ」
「さっき研磨と楽しそうに話してたけど」
「あー、ゲームの話ですかね」
「アイツは好きになんない方がいいよ」
「?」
「多分俺の方が大事にするタイプだと思うよ」