第3章 春高予選
コンコンと部屋のドアがノックされる
「お姉、入るで」
「母ちゃんがお茶持って行けって」
妹たちが入ってくる
助かった…
あのまま2人きりやったら心臓口から飛び出してたかもしれん
「ありがとう」
ツッキーが言うと2人は照れ臭そうにモジモジした
「ほなごゆっくり〜」
2人が慌ただしく部屋から出ていき、騒ぎながら階段を降りて行った
「あんまり長居すると歩の家族に誤解されそうだから、本借りたら帰る」
「あ、うん。そや、せっかく来たんやし、そこの本棚気になるのあったら適当に持って帰ってくれていいで」
ツッキーは本棚の前にしゃがんで、何冊かをスッと取り出した
「これとこれも借りる」
手渡された本を用意していた紙袋の中の本に重ねる
「私もまた何か貸してな、まだ先やけど年末兵庫帰省するし、新幹線暇やから」
「分かった。さっきの話だけど、いつか連れてって」
「ん?どこに?」
「神戸」
「あ、うん」
「じゃあ帰るね」
玄関まで降りてくると、母ちゃんが出てくる
「月島くんもう帰るん?」
「あ、本取りに寄っただけなんで。お邪魔しました」
「またいつでもおいで」
ツッキーはペコっと会釈する
外まで送りに出ると、日差しは先程より幾分かマシになっていた
「重たくない?大丈夫?」
「平気。また明日」
「うん、また明日」
ツッキーが来た道を戻って行き、角を曲がって見えなくなったところで私も家に入った
…と、もちろん母ちゃんと妹たちがニヤニヤしながら玄関で待ってる
「ほたるくんがお姉の本命やったわけやな」
「ほたるちゃうし、あれでケイって読むの」
「ケイ君!名前までカッコいい!」
「お母ちゃんびっくりしたわ!急に連れてきたと思ったら、あんなカッコええ子」
「ツッキーめっちゃ引いてたから、ほんまやめたって」
「次男?」
「次男やけど」
「最高やん!これで橘家も安泰やな!まぁお母ちゃんは侑くんでも良かったけどな」
「侑はもうええから!てかツッキーもただのクラスメイトやし、本取りにきただけやから!」
「そうなん?」
妹たちはニヤニヤしてる
「どうりで昨日の人ではアカンわけやわ」
「あんたもうほんまいい加減にしーや」
私はこうなると分かってたのに、ツッキーを家に招いた軽率さを後悔した