第14章 NEXT LEVEL
ー歩side
本当は私もめっちゃ怖かったけど、それでも二口さんには、私のせいで全国大会に出られないなんてことになってほしくなかった
だから後悔してない
でも後から、もしあの時警察に通報したんが嘘ってバレてたら…とかあのまま連れて行かれてたらって思うと、急に怖くなって震えが止まらんくなった
そんな私を二口さんは抱きしめて
「大丈夫じゃねぇだろ…マジでごめん…カッコ悪りぃな俺、好きな女1人守れないなんて」
聞いたこともないほど、か細い声で呟いた
???
「…今、好きな女って言いましたか?」
二口さんの胸から顔を上げて、訊ねると
「おう…こんな風に言うつもりじゃなかったけど」
二口さんは目を合わせず、遠くを見ながらボソボソと答えた
「…全くそんな素振り…」
「あっただろ、デートに誘ってる時点で気づけよ。鈍感」
「えええ…今までのが好きな女の子に対する対応なんやとしたら、恋愛偏差値小学生ですよ?」
「うるせー。その減らず口、塞いでやろうか」
もう一度抱き寄せられ、身長差のある二口さんは屈むようにして私に唇を近づける
「わっ…」
「やっぱやめた」
そう言って二口さんは大きな掌でいつものように、私の髪をクシャクシャとする
「ちょ…何なんまじで」
「多分お前が思ってるより、俺…やばいぐらいお前のこと好きだから」
「…」
まさか二口さんがそんなこと言うてくるなんて思ってなくて、恥ずかしくて髪を直すふりして俯いた
「だから諦める」
「…?」
「お前のこと守ってやれなかった俺なんかが、お前を好きでいる資格ねぇから」
「…そうですか」
「あの眼鏡に言っとけ、お前はマジで死んでも歩を守れって」
「…死んでも守るような状況、21世紀の日本でありますかね?」
「知らねーよ…さぁ帰んぞ、送ってく」
そう言うと二口さんは踵を返して歩き出した
私はその斜め後ろを早歩きで追いかける
ーやばいぐらいお前のこと好き
そんな風な告白のされ方は初めてだった
てか二口さんは私のことを、いつどこでそんなに好きになったんやろう
言葉少なに歩く間、今までのことをぼんやり考えていた