第14章 NEXT LEVEL
呼び止めると歩は振向き、手に持っていたスマホを俺のほうに向かって放り投げた
それをキャッチして画面を見ると
【警察に通報してるフリして】
とメモされていた
俺は咄嗟にスマホを耳に当て
「そうです、ありがとうございます!すぐ近くまで来てるんですね!」
と、一か八か芝居を始めた
歩と俺を交互に見る男たち
「なんだ?なんか妙なことしやがったか?」
訝しがる男たちに歩は
「110番しただけです」
平然と言い放つ
「な、サツ?!だからわざと今の場所が分かるような話し方…このアマ…」
「彼の話によると近くまで警察来てるみたいですよ?早く逃げた方がいいんじゃないですか?」
「クソ…やべ、逃げるぞ!」
1人が逃げ出すと、他の奴らも後に続いて走り出す
最後の1人が振り向くと
「逃げられると思うなよ!烏野高校の歩、覚えたからな」
と言い捨てて去っていった
男たちの姿が見えなくなった所で歩はくるりと俺の方を向いた
「行きましたね」
「…行きましたね、じゃねーわ…お前、なんて危ねぇことすんだよ」
「全国大会前に警察沙汰はあかんでしょ」
そう言って彼女はニコリと笑う
なんでだよ
なんで俺なんかのためにそこまで…
気づいたら俺は歩を思い切り抱きしめてた
「ちょ…二口さん…何ですか?私に抱きつくほど怖かったですか?」
なんてまた減らず口を叩いてやがる
「ああ…怖かった」
「え?」
「お前がマジで連れてかれたらって…お前がなんかされたらって思ったら、めちゃくちゃ怖かった」
「…二口さん…」
その時、腕の中の歩が震えてることに気付いた
強がってるけど本当はコイツも怖かったんだ
なのに俺のことを体を張って守ろうとしてくれた
それに比べて俺は…歩のために全てを捨てられなかった
全国もチームメイトも学校も将来も何もいらないから歩を助けるって、迷いなく動くことが出来なかった
こんな俺がコイツを好きでいる資格なんかねぇよな
「…悪かった歩、俺なんかのために…」
「もう、やめてくださいよ。大丈夫ですから」