第3章 春高予選
9月半ば、まだまだ日差しは厳しいけど、坂道を自転車で下ると心地よい風が吹いてる
坂下商店でアイスを買って、翔陽は自転車に乗りながら全部食べたけど、私たちは2人乗りしてるからその場で食べずに家まで持って帰った。
「翔陽!また明日!」
「おう、歩、月島じゃあな!」
翔陽が山奥に向かって走り出した
「さ、アイス溶けたあかんし入って食べよ」
「え、外でいいのに」
「余計目立つから入って」
私はツッキーを玄関に押し込む
「ただいまー」
「おかえりー」
リビングから母ちゃんの声がする
「はい、このまま二階まで上がって!」
「え、お邪魔するなら挨拶しないと」
「ええし、ほんま見つかったら面ど…
ガチャ
「歩なに玄関で騒いで…!!
いややわぁ、こんにちは」
母ちゃんがリビングから出てきた
「はじめまして、歩さんと同じクラスで部活も同じの月島です」
「あんたこんなイケメン連れてくるんやったら、先言いーな!お母ちゃん恥ずかしいわ、化粧もせんとこんな格好で」
「えーねん、もうほんま」
騒ぎを聞きつけた妹たちも玄関に集結する
「月島くんや月島くん!昨日お姉が電話しとった」
「背たかっ!何センチあるんですか?」
「…188かな?」
「お父ちゃんと一緒くらいやわ〜お父ちゃんも昔は男前で…
「ちょ、もうほんまツッキー引いてるからやめたげて!」
私はツッキーを押しながら階段を昇って自分の部屋に押し込む
「日曜なん忘れてたわ。みんなおってほんまごめん」
「僕は別に」
「いや、ドン引きやろあの人ら」
「歩いつもあんなだけど」
「なんかショックやわ」
「それ取って、僕のアイス」
「あ、ごめんごめん」
カップに入ったイチゴのアイスを手渡す
「ツッキー甘党なん?いっつも可愛いアイス食べてる」
「そうだね」
私も蓋を外してソフトクリームを食べる
「ケーキバイキングとか行く?」
「行ったことないけど行きたい」
「神戸に有名なお店があってな、ってここ宮城やったわ。もう神戸気軽に行けへんやん」
「歩…溶けてる」
「え?」
ツッキーが近づいて、溶けたソフトクリームが伝った私の指をペロッと舐める
!!!!
眼鏡越しのツッキーと目が合う
バクバクと心臓がうるさい