第14章 NEXT LEVEL
「うわー、覚えてました?」
歩はバツの悪そうな顔をしてるけど、覚えてるに決まってる
初めて出会った日だからな
急に息を切らして階段を駆け上がってきた女が、手すりから身を乗り出して、よく通る大きな声で勇ましく応援し出した
まさかあん時は、こんな風にコイツのことを好きになるなんて思ってなかった
「覚えてるに決まってるだろ、迷子のくせに気合い入った応援し出すし、俺に向かって啖呵切ってきたし…忘れたくても忘れらんねーわ。…で、今どこだよ」
歩のスマホを覗き込む
「え、ここに行きたいんですけど、今ここで…」
「お前このナビ、ノースアップなってるけどこれで分かんの?」
「は?ノースアップてなんですか?ノースフェイスの親戚?」
「バカ、ちげーわ」
そう言って彼女のデコを指で弾く
「ッた…」
「ノースアップてのは、北が上になるようにナビが表示されてんだよ」
「ああ!なるほど、そうなんですよ!進行方向を上向きにナビしてほしいのに、この矢印画面を横向きに進んでいくんですよ!マジ意味わからん」
「はは、ほらこのボタンあんだろ?ここ押すと、ヘディングアップ…つまり進行方向上が上になる」
「!! 二口さん天才!」
「どーも…それにしても、なんちゅう場所に迷い込んでんだよテメェは」
歩はどうやら、一本入るところを間違えていたようで、結果俺たちは繁華街から少し奥まった…結構ディープなエリアに入ってきてしまっていた
まだこの時間だから夜のお店は人気がないけれど、少し先には所謂ラブホテルの入口があり、電光掲示板で休憩1時間いくら〜って表示されていた
歩もそれに気づいて苦笑いしている
「…ですね、ってか二口さんも私みたいな迷子の前科持ちに黙ってついてこずに、意見してくださいよ!」
「ほんっと口の減らない女だな〜大体お前がピッピと来たことあるっつーからついてきたんだろ?」
「そもそも二口さんがデートしようとか言い出したんやから、もっとエスコートしてくださいよ」
「は?エスコートしろだぁ?分かった、じゃあそこのホテルにでもエスコートしてやるよ」
「…なっ…こんな昼間っから何言ってるんですか!変態!ドS!」