第14章 NEXT LEVEL
レースが始まると俺たちはガチでハンドルを握って勝負する
「ちょ!二口さんっ!当たってこんといてくださいって!」
「は?お前が軽量級使ってんだから、当たっていくに決まってんだろ!あ、てっめぇ…バナナ…」
2人でギャーギャー言いながら何試合もレースしてるうちに、俺らの周りにはいつの間にか人だかりが出来てた
「あのカップル、おもしろくない?」
「すっごい美男美女なのにガチでマリカーしてるのウケるー」
なんて声が耳に入ってくると、あー俺ら普通にカップルに見えてんじゃんって…なんとも言えない気持ちになる
それに、そーゆー声は歩にだって聞こえてるだろうし…
もっと意識しろよ
デートだっつってんだからさ
「スキあり!!」
ボーッとしてたら、いつの間にやら緑の甲羅を3つ車体の周りに装備した、ヨッシーが背後にいる
「やっべ…」
気づいた時にはもう遅く、俺のドンキーコングはコインを撒き散らしながらスピンし、そのままヨッシーはゴールに滑り込む
「っしゃー!勝ち越したーーー!し・り・じ!し・り・じ!」
「誰がやるか!ってか見てみろよこの人だかり!」
「えー、だからこそ…でしょ?こん中でやったらマジ英雄ですよ」
「だからやんねぇっつーの、さ、いくぞ」
俺は歩の腕を掴み、ギャラリーを掻き分けて外に出る
「ちょ、二口さんっ」
俺が尻字をしなかったのが気に入らないのか、歩は不服そうにしている
いや普通に考えて絶対嫌だろ
あんな人だかりの中でそんなこと出来るわけねーし、第一好きな女の前でやるわけねーだろ
「んだよ、やるって言ってねーだろ?他、なんかないのかよ?食いてーもんとか欲しいもんとか」
「えー…あ、じゃああれ!」
「どれだよ」
「タピオカミルクティー!最近この近くに出来たんです」
「おお、それにしようぜ。ちょうど喉乾いてるし」
「1回やっちゃんと、あ、うちのもう1人のマネージャーと行ったんですけど」
「ああ、ピッピな」
「ピッピ定着しとる!あの時はやっちゃんに案内してもらったんですよねー…私微妙に方向音痴なんで」
「あー…そういや初めて出会った時、お前迷子になってたもんな」